世界中の母親と乳児の衛生管理改善に向けた,LDS慈善事業団の新しい訓練プログラム

提供者: LDS慈善事業団

  • 2015年8月20日

インドネシアのバンドンで実施された「乳児の呼吸補助」訓練において,新生児シミュレーターを使って助産師たちに新生児蘇生法を教えるLDS慈善事業団のスペシャリスト

記事のハイライト

  • LDS慈善事業団の母体および新生児ケア訓練プログラムへの変更は,世界中の乳幼児と母親の命を救う取り組みにこれまで以上に大きな影響を及ぼすであろう。
  • この新しいプログラムは,「新生児蘇生」,「母体ケア」,そして「全ての乳児のための必須ケア」から成る。

「誕生時に呼吸していない乳児を救うための新生児蘇生訓練プログラムを実施するにつれて,母親の死亡率を低下させることを目指したプログラムも含める必要があることが明らかになってきました。」 ―ジョージ・M・ベネット博士,LDS慈善事業団NRTスペシャ リスト

ジョージア(旧グルジア)のアハルツィから参加した助産師のエルザ ・クネラシビリは,心臓拍のない赤ちゃんが生まれたとき,その病院で勤務中だった。 病院のスタッフは,その赤ちゃんが死んでしまっているだろうと思った。 しかし,エルザがその赤ん坊を腕に抱いたとき,状況が一変した。

エルザは次のように説明している。「その子を手のひらに置いたとき,鼓動を感じたんです。 幸いなことに,わたしは新生児蘇生訓練コースを受講していました。 ……赤ちゃんに呼吸装置の袋とマスクを取り付けて人工呼吸を施し始めると,1分たった頃には呼吸をしていました。 わたしとその子の両親の喜びはいかばかりだったでしょう。 赤ん坊の父親は飛び跳ねていました! わたしには41年間の勤務経験がありますが,このケースはわたしの人生において最も特別なものでした。 これからもずっと,この特別な赤ちゃんとこの経験を忘れることはないでしょう。」

これはLDS慈善事業団のボランティアから受けた新生児蘇生訓練のおかげで数々の命を救う手助けをしてきた,世界中の人々によって語られた多くの感動的な話の一つにすぎない。  

LDS慈善事業団は,母親と乳幼児のためのケアを支援するという確固とした信念を抱いている。 この10年以上にわたって,LDS慈善事業団は他の組織と協力し,医師や看護師,助産師らに,誕生時に呼吸をしていない赤ん坊を蘇生させるのに必要な知識や機器を提供することで乳児の命を助けてきた。

この訓練は,これまで数々のプロジェクトが実施されてきた国々で好評を博してきた。 LDS慈善事業団は既に42か国で3万人以上の人々の生活に影響を及ぼしてきたが,さらに多くの命を救うために,現在プログラムを拡張しつつある。 LDS慈善事業団は新しい訓練カリキュラムを導入するに当たり,2015年1月にシグネチャープログラムの名前を「新生児蘇生訓練」(NRT)から「母体および新生児ケア」(MNC)に変更した。

ガーナのアクラで,LDS慈善事業団によって提供された機器を使った訓練を通して新生児蘇生技術を学ぶ医師や看護婦, 助産師たち。

「誕生時に呼吸をしていない乳児を救うための新生児蘇生訓練プログラムを実施するにつれて,母親の死亡率を低下させることを目指したプログラムも含める必要があることが明らかになってきました」とLDS慈善事業団NRTスペシャリストのジョージ・M・ベネット博士は語る。  

MNCシグネチャープログラムは,「新生児蘇生」,「母体ケア」,「全ての乳児のための必須ケア」という3つの主要な部門から成る。 カリキュラムは各部門に適用でき,Jhpiegoおよび米国小児科学会との協力の下,LDS慈善事業団によって活用されている。

「他の世界規模の協力団体とともに働くことで,より多くの成果を得ることができます。各国で一緒に働き,リソースを連合させることができるので,さらに大きな影響力を生み出せるのです」と,MNCシグネチャープログラムマネージャーのディーン・ワーカーは言う。 「他の組織との連携は取り組みに相乗効果をもたらし,一層大きな成功につながります。」

新生児蘇生訓練

NRT救命技術は「新生児の呼吸補助」(HBB)カリキュラムに基づき,医師や看護師,助産師に引き続き教えられることになっている。 LDS慈善事業団はトレーナー育成方式を用いており,国内の病院や診療所から集まった代表者が蘇生技術を学んだ後に,それを他の人に教えられるようにしている。 実践的な体験学習の機会を提供するために,LDS慈善事業団は新生児医療の模擬訓練機器や持ち運びできる訓練用バック,医療機器などを寄贈している。

母体ケア

LDS慈善事業団の新生児蘇生トレーナーから教えられた救命措置を施した後,赤ん坊を抱くモンゴルの母親。 写真/マーク・フィルブリック

母体ケアのための訓練は「母親の救命」(HMS)カリキュラムによるものである。 産後の出血が母親の死亡原因となることから,まず産後の大量出血を止めたり,防いだりする技術がこの訓練における主眼点となっている。 2014年6月に,この新しいカリキュラムがタジキスタンとキルギスタンで試験的に導入された。 LDS慈善事業団はこうした先駆的な訓練に向けて,タジキスタン共和国の保健省,ユニセフ,その他のさまざまな組織と協力体制を取った。 その結果,非常に大きな成功を収め,主任トレーナーとなる15人の助産師の他,200人の助産師や看護師がHMSの実習訓練で指導を受けた。

全ての新生児のための必須ケア

赤ん坊の健全な成長を維持するには,生後数日間の適切なケアが極めて重要である。 「全ての乳児のための必須ケア」(ECEB)カリキュラムの資料では,正しい授乳法,乳児の正常な体温維持,危険な兆候の監視,その他の救命措置について教えられている。 「母体および新生児ケア」シグネチャープログラムにおける3つの要素全てに向けたカリキュラムは,どれも同様のフォーマットで作られている。 一貫した簡潔な形式で情報を提示することにより,理解を深めやすくするためである。 通常一度に実施される訓練は一つだけであるが, その地域や国の必要に応じて複数の訓練を組み合わせて実施することもできる。

これら3つの訓練に加えて,LDS慈善事業団は2016年に第4の訓練を導入する予定である。 MNCシグネチャープログラムにおけるこの新しい要素は,「乳児のための必須ケア」(ECSB)と呼ばれることになっている。 予定されているこのカリキュラムでは,主に未熟児で生まれた赤ん坊の命を救うのに必要なスキルに焦点を当てている。 

「その活動領域を広げつつある教会のプロジェクトは,世界中の母親と新生児の健康に,これまで以上に深く,永続的な影響を及ぼしていくことでしょう」とワーカーは語る。 「他の人を助けることにおいて,これほど大きな影響力を持つ取り組みの一翼を担うのは胸躍ることです。」