2000–2009
あなたの家を整えなさい
2001年10月


あなたの家を整えなさい

「家族はこの生涯における最大の業と喜びの中心で(あり)永遠にわたってその中心であり続けることでしょう。」

以前わが家に10代の娘が何人がいたころ、休みに家族を連れて電話もボーイフレンドも届かない遠い所へ行きました。グランドキャニオンを流れるコロラド川をゴムボートで下ったのです。出発の時点では、この旅にどれほどの危険が潜んでいるのかまったく分かりませんでした。

初日は楽しく過ぎました。ところが2日目になって、ホーンクリークの急流に差しかかり前方の激しい段差を見たときには、恐ろしくなりました。大切な家族がゴムボートで漂いながら、激流に飲み込まれようとしているのです!反射的にわたしは片手で妻を、もう一方の手でいちばん年下の娘を抱きかかえました。彼らを守ろうと、自分の方へ抱き寄せました。ところが断崖だんがいに来たとき、ボートがしなって巨大な石投げのようになり、わたしは空中に投げ出しました。わたしは渦巻く激流に落下しました。なかなか水面に上がれません。息を継こうとする度に、ボートの底にぶつかってしまうのです。家族にはわたしの姿が見えませんでしたが、わたしには家族の叫び声が聞こえていました。「お父さん!お父さんどこ?」

わたしはついにボートの横に出て、水面に上がりました。家族は溺でき死寸前のわたしを水から引き上げてくれました。無事の再会に皆が感謝しました。

その後は楽しい日々が続きました。そして最終日、この旅で最も危険な急流、ラバフォールを通る時が来ました。前方を目にしたわたしは、すぐにボートを岸に着けてもらい、緊急家族会議を開きました。ここを無事に切り抜けるには、慎重な計画が必要だと思ったのです。わたしは家族にこう説明しました。「何が起きても、ゴムボートは水面に浮かんでいる。ボートに固定してあるロープに力の限りしがみついていれば、何とかなる。たとえボートが引っ繰り返っても、ロープにしっかりつかまっていれば大丈夫だ。」

わたしは7歳の娘に向かって言いました。「みんなはロープにつかまる。でも君はお父さんにつかまっているんだよ。お父さんの後ろに座って。お父さんはロープにつかまるから、お父さんにしっかりとしがみついているんだよ。」

そして計画を実行しました。わたしたちは激しい急流を乗り越えました。———必死でロープにつかまりながら。して全員が無事でした。1

教訓

兄弟姉妹、わたしが命を落としそうになりながら学んだ教訓についてお話ししましょう。人生を歩んでいくときに、困難なときにおいてさえ、父親が反射的に妻や子どもたちを抱き締めることは必ずしも目的を達成する最善の手段とはなりません。しかし、もし父親が救い主と福音の鉄の棒に忠実につかまっているならば、家族は救い主と父親につかまりたいと思うでしょう。

この教訓は父親だけに当てはまるものではありません。性別や既婚、独身、年齢を問わず、人は直接救い主につながり、真理の鉄の棒にしっかりつかまり、真理の光によってほかの人を導くことができます。そうするときに、この人に従いたいと人が思うような義の模範となることができるのです。

戒め

主にとって、家族はきわめて大切です。主はわたしたちが肉体を得て家族を築けるように地を創造されました。2 主は家族を高めるために教会を設立されました。家族が永遠に続くように神殿を用意されました。3

もちろん主は父親に、家族を管理し、養い、守るよう期待しておられます。4しかし主はそれ以上を求めておられるのです。聖文には「あなたの家を整えなさい」と命じられています。5 両親はこの戒めの大切さと意味を理解したなら、その方法を学ばなければなりません。

家を整えるには

家を主に喜ばれるように整えるには、主の方法を用いなければなりません。「義と信心と信仰と愛と忍耐と柔和」という主の属性が必要です。6父親は「いかなる力も影響力も、神権によって維持することはできない、あるいは維持すべきではない。ただ、説得により、寛容により、温厚と柔和により、また偽りのない愛に」よることを忘れてはいけません。7

両親は「心を大いに広げる」「優しさと純粋な知識」の生きた模範でなければなりません。8母親も父親も、利己的な関心事を捨て、偽善、暴力、悪口を避けなければなりません。9両親は、子どもが生まれつき自由を望むものであることをじきに学びます。人は自分で歩んで行きたがるものなのです。それがたとえ親の善意によるものであっても、拘束されたくはないのです。しかし、だれでも主に従うことはできます。

いにしえのヨブはこの概念を教えました。こう言っています。「わたしは堅くわが義を保って捨てない。わたしは今まで一日も心に責められた事がない。」10 ニーファイもこう教えています。「だれでも神の言葉に聞き従って、それにしっかりつかまる者は、決して滅びることがな〔い。〕」11

福音が時代を超えたものであるように、これらの教義は永遠のものです。以下の聖文の勧告について考えてみましょう。

箴言にはこう書かれています。「教訓をかたくとらえて、離してはならない、それを守れ、それはあなたの命である。」12 新約聖書にもこうあります。「兄弟たちよ。堅く立って、…言伝えを、しっかりと守り続けなさい。」13

モルモン書には、「鉄の棒」14にしっかりつかまっていた人々について書かれています。この鉄の棒は「神の言葉」15にたとえられています。真理で固定された鉄の棒は動くことも変わることもありません。

そのほかの神の命令

両親は主の御言葉に従うだけでなく、それを子どもに教えるように神から命じられています。聖文には明確な指示が与えられています。「シオンにおいて、……子供を持つ両親がいて、8歳のときに、悔い改め、生ける神の子キリストを信じる信仰、およびバプテスマと按手による聖霊の賜物の教義を理解するように彼らを教えなけれは、罪はその両親の頭こうべにある。」16

この戒めでは、子どもを教える責任がはっきりと両親にゆだねられています。家族に関する世界への宣言は、「家族の責任を果たさない人々は、いつの日か、神の御前に立って報告することにな〔る〕」17と警告しています。わたしはそれが真実であると厳かに申し上げます。

これらの義務を果たすには、教会と家族の両方が必要です。それらは互いに協力し合い、強め合います。教会は家族を高めるためにあります。そして家族は教会の土台となる単位なのです。

この相互関係は、教会初期の出来事かはっきりと示しています。1833年、主は教会の若き指導者たちを親としての不十分さゆえに叱責しっせきされました。主は言われました。

「わたしはあなたがたに、あなたがたの子供たちを光と真理の中で育てるようにと命じた。

しかし、まことに、わたしはあなた……に言う。…あなたは、戒めに従ってあなたの子供たちに光と真理を教えてこなかった。…さて、わたしは戒めをあなたに与える。……あなたは…自分自身の家を整えなければならない。あなたの家には、正しくないことがたくさんあるからである。…まずあなたの家を整えなさい。」18

この啓示は、預言者ジョセフ・スミスの誠実さを力強く伝える、数多い証拠の一つです。ジョセフはこの厳しい叱責の幾つかが自分に向けられたものであったにもかかわらず、聖典から省かなかったのです。19

今日、大管長会は親が優先すべきことを再度強調しています。聖徒に向けた最近の手紙から読んでみましょう。「親である皆さんに、子供たちを福音の原則の中で教え育てることに全力を尽してくださるようお願いいたします。そのことによって子供たちは教会に活発であり続けるでしょう。家庭は義にかなった生活の基であり、ほかのどのような手段も、家庭に代わる役割を果たし得ませんし、神から与えられたこの責任を遂行するうえでの大切な役割を果たしてはくれません。」20

両親は何を教えるべきか

この神聖な指示を念頭に置きながら、何を教えるべきかについて考えてみましょう。聖文は両親に、イエス・キリストへの信仰、悔い改め、バプテスマ、聖霊の賜物について教えるように命じています。21 両親は救いの計画22 と神の戒めに完全に従って生活することの大切さを教えなければなりません。23うしなければ、子どもたちは贖い自由をもたらす神の律法を知らずに苦しむでしょう。24 また両親は、地上に教会と神の王国を築くために25時間と才能、什分の一、財産26をささげ、生活を奉献する方法を模範によって教えなければなりません。そのような生活は確かに子孫に祝福をもたらします。聖文にこうあります。「あなたの務めはとこしえに教会に対するものである。これはあなたの家族のゆえである。」27

家族に敵対するもの

親も子も、主の業と御心にはいつも強力な反対勢力があることを理解しなければなりません。28神の業(と栄光)は不死不滅と家族としての永遠の命をもたらすことであるため、29当然の結果として敵の攻撃は家庭の中心、家族に向けられます。ルシフェルは執拗しつように命の神聖さと親としての喜びに的を絞って攻撃してきます。

悪しき者は絶えず活動しているのですから、気を緩めてはなりません。一瞬たりともです。何の害もないように思われる小さな誘いも、悲劇的な背きにつながる大きな誘惑となりかねないのです。昼も夜も、家でも外でも、罪を避け「良いものを守」らなければなりません。30

ポルノグラフィーや妊娠中絶、有害な薬物の常用といった反抗的な悪は、幸福な家庭と忠実な家族の道徳的基盤をむしばむ白ありとなります。悪に身をゆだねれば、必ず家族を危険にさらすことになるのです。

サタンの望みは人を自分のように惨めにすることです。31肉欲を駆り立てて霊くらやみ的な暗闇の中で生活させ、死後の世界の存在を疑わせようとします。使徒パウロはこう言っています。「もしわたしたちが、この世の生活でキリストにあって単なる望みをいだいているだけだとすれば、わたしたちは、すべての人の中で最もあわれむべき存在となる。」32

家族の祝福を永続させる

しかし、神の偉大な幸福の計画を理解することにより、わたしたちの未来への信仰は強まります。主の計画は絶えず問いかけられてきた質問に答えてくれます。互いへの思いやりと愛は一時的なもので、死とともに失われるのでしょうか。いいえ。家族はこの地上での試しの期間の後も続くのでしょうか。そのとおりです。神は日の栄えの結婚と、最大の喜びの源である家族が永遠であることを明らかにしておられます。

兄弟姉妹の皆さん、財産や世の誉れはいずれ消えていきます。しかし妻や夫、家族としての結びつきは違うのです。家族関係がどのくらい続くかに関して、人の最高の望みを満たしてくれるものはただ一つ、永遠です。永遠の結婚の祝福を得るためには、大きすぎる犠牲などありません。求められるのは、神の御心に添わないものを拒み、神殿の儀式を尊ぶことだけです。神聖な神殿の聖約を交わし守ることによって、神と伴侶への愛と、まだ生まれていない子どもたちを含む子孫への真の関心を証明するのです。家族はこの生涯における最大の業と喜びの中心です。そして「王位、王国、公国、……力、主権、……昇栄と栄光」を受け継ぐとき、家族は永遠にわたってその中心であり続けることでしょう。33

今すぐ家を整え忠実に福音につかまっているなら、これらのかけがえのない祝福を得ることができるのです。神は生きておられ、イエスはキリストであられ、この教会は主の教会です。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は主の預言者です。イエス・キリストの聖なる御名により証します。アーメン。

  1. .ラッセル・M・ネルソン、レベッカ・M・テーラー“Friend to Friend,”Friend, 1997年3月号、6-7参照

  2. .教義と聖約2:1-3参照

  3. .教義と聖約138:47-48参照

  4. .1テモテ5:8参照

  5. .教義と聖約93:44。列王下20:1;イザヤ38:1も参照

  6. .1テモテ6:11

  7. .教義と聖約121:41

  8. .教義と聖約121:42

  9. .1ペテロ2:1参照

  10. .ヨプ27:6

  11. .1ニーファイ15:24

  12. .箴言4:13

  13. .2テサロニケ2:15。ほかに関連する聖句として次の二つが挙げられる。「あなたは、キリスト・イエスに対する信仰と愛とをもって、わたしから聞いた健全な言葉を模範にしなさい。」(2テモテ1:13)「わたしたちの告白する望みを、動くことなくしっかりと持ち続け〔なさい。〕」(ヘブル10:23)

  14. .1ニーファイ8:30

  15. .1ニーファイ11:25

  16. .教義と聖約68:25、強調付加

  17. .「家族一世界への宣言」『聖徒の道』1996年6月号、10

  18. .教義と聖約93:40-44

  19. .教義と聖約93:47参照、

  20. .ゴードン・B・ヒンクレー大管長、トーマス・S・モンソン副管長、およびジェームズ・E・ファウスト副管長の署名がなされている]999年2月11日付けの同手紙では、両親が行うことも述べられている。「わたしたちは親の皆さんと子供たちに、家族の祈り、家庭の夕べ、福音の研究と指導、そして健金な家族活動を最優先するようにお勧めします。必要とされるそのほかの事柄や活動がどれほど価値のある適切なものであったとしても、それらは、親と家族だけが全うできる天与の義務に取って代えられるものでは決してありません。」“Policies, Announcements, and Appointments,” Ensign、1999年6月号、80で引用)

  21. .モロナイ8:10;教義と聖約19:31;68:25-34;138:33信仰箇条1:4参照

  22. .モーセ6 :58-62参照

  23. .レビ10 :11;申命6:7;モーサヤ4:14参照

  24. .2ニーファイ2:26; モーサヤ1:3; 5:8; 教義と聖約98:8参照

  25. .ジョセフ・スミス訳マタイ6:38参照

  26. .モーサヤ4:21-26; 18:27; アルマ1:27参照

  27. .教義と聖約23:3

  28. .モロナイ7:12-19参照

  29. .モーセ1:39参照

  30. .1テサロニケ5:21

  31. .2ニーファイ2:17-18、27参照

  32. .1コリント15:19

  33. .教義と聖約132:19