2000–2009
アロン神権者へ――決意の10年間に備える
2007年4月


アロン神権者へ――

今皆さんがどのようにその神権の責任を引き受けるかが,将来最も重大な決断をする備えとなるのです。

世界各地の会場に集まった兄弟たちと神権部会に同席でき,光栄です。「見よ,王の軍は旗を掲かかげ生命いのちの戦いくさ勝ちて進む」1という賛美歌の言葉を思い出します。皆さんはまさに信仰深く忠実な神の軍です。

今晩わたしは,この王の軍の最も若い戦士であり,人生の戦いに勇敢に立ち向かっている執事,教師,祭司の職にあるアロン神権者の皆さんに話したいと思います。覚えてはいなくとも,皆さんは遠い昔,前世で同じ一つの決断をし,神の計画に同意しました。天上の大会議で,皆さんは天の御父と御子イエス・キリストの御み心こころに従うと決心したのです。このことを忘れないでください。皆さんは最も重要なときに救い主に従うと決意した神の息子であり,そのことにより皆さんは真に偉大な者となったのです。.

永遠の進歩を決定したその神聖な決断により,皆さんは肉体を得て,悪よりも善を選択する自由を手に入れました。そして今や皆さんは成長し,救い主の属性を自分自身に受ける準備をしています。皆さんはバプテスマを受け,聖霊を受けました。皆さんは自分が何者であるのか,なぜこの地上にいるのか,またどこに行こうとしているのかを学んでいます。そして今や皆さんはアロン神権を受けているのです。

アロン神権は人生で用意をする期間に与えられる,備えの神権です。今皆さんがどのようにその神権の責任を引き受けるかが,将来最も重大な決断をする備えとなるのです。重大な決断の中にはメルキゼデク神権を受けること,神殿に参入すること,伝道に出ること,教育を受けること,職業を選ぶこと,そして伴はん侶りょを選択し聖なる神殿でこの世においても永遠にわたっても結び固められることがあります。わたしたちが行う決断にはすべて時と季節があります。適切な時と季節に決断するようにしてください。これら人生を変える決断のすべてが,「決意の10年間」とわたしが呼ぶ,20代の実に忙しく比較的短い期間に起こります。

ジェット戦闘機のパイロットになる訓練をしていたとき,わたしはフライトシミュレーターを使ってそのような重要な決断を下す備えをしました。例えば,火災警報ランプが点灯し,飛行機が急旋回してコントロールが利かなくなった場合,いつ飛行機から脱出すればよいのかを決断する練習をしました。こういった準備をしていなかった大事な友人が一人いたのを覚えています。彼はシミュレーター訓練を抜け出してゴルフや水泳に行っていました。こうして彼は,緊急訓練をまったく受けませんでした。数か月後,彼の飛行機は火を噴き,炎に包まれたまま旋回しながら地上に落ちて行きました。火災警報ランプに気づいた彼の年下の同僚は,警報に対処する能力を身に付けていたため,いつ飛行機からパラシュートで脱出すればよいのか分かっていました。しかしその決断をする準備をしていなかったわたしの友人は飛行機にとどまり,墜落死しました。

これから10年という皆さんの準備の時間は限られています。アロン神権者である皆さんにとって今重要なのは,準備することです。皆さんが人生でこれから先10年間に下す重大な決断のため,必要なときに答えが出せるよう用意をしておかなければなりません。それぞれの決断を下す段階に来たとき,いつ何をすればよいのかを知っておかなければならないのです。まったく決断しないということは,間違った決断をするのと同じくらい致命的なことになり得ます。皆さんが下す,あるいは下さない決断の多くは,永遠の結果をもたらします。

今こそイエス・キリストの弟子となる時です。これは「わたしに従ってきなさい」2という主の招きを受け入れることを意味します。これはわたしたちが前世で下した決断なのです。今わたしたちはこの現世において,毎日,あらゆる状況の中で,救い主の御み名なを受け,主の贖いを覚え,戒めを守ることによって再び決意しなければなりません。バプテスマを受けたとき,わたしたちはこのことを聖約しました。そして毎週聖せい餐さんを受けることで,これらの聖約を新たにすることができるのです。

今こそ常に聖霊を伴侶とするために自らを組織し,自らを備える時です。これは皆さんの両親や指導者たちが皆さんに教えてきたことを行うこと,すなわち聖文を学び,朝晩の祈りをささげ,身だしなみを整え,予定表に従い,目標を立てて達成し,すべての面で正直であり,決意を守り,授かっている神権にふさわしくあるということです。また預言者が小冊子『若人の強さのために』で明らかにしている標準に添った生活を常に,常にしてください。

今こそだれが皆さんの友人であるのかを決め,また義にかなった永遠の伴侶にふさわしくなると決意する時です。兄弟の皆さん,これはとても簡単なことです。母がわたしに教えてくれたように「類は友を呼ぶ」ものです。仲間というものは,すばらしいことをするよう皆さんを鼓舞してくれることもありますが,好ましくない惨めな道へと誘惑することもあります。でも,真の友人は福音を実践することを容易にしてくれます。決して彼らの方法と主の方法のどちらかをわたしたちに選択させたりするようなことはありません。わたしたちがほかの真の友人を引きつけるような人になれるよう助けてくれます。またわたしたちが,義にかなった伴侶から永遠にともにいたいと望んでもらえるような人になれるよう助けてくれます。皆さんがそういう友人を得たければ,こう自問してください。「わたしはほかの人にとってそういう友人となっているだろうか。」「永遠の伴侶に求める特質を自分自身が備えているだろうか。」

今こそ伝道の備えをする時です。それぞれの状況に応じて,皆さんは専任宣教師として奉仕することができるでしょう。これは重要ですが,もっと重要なのは伝道に出る前に神殿に参入するということです。それを忘れないでください。伝道は,奉献の律法を実践することによって神殿での聖約を守るとても貴重な機会です。すなわち,自分の時間と賜たま物もの,才能のすべてを主にささげ,心と,勢力と,思いと,力を尽くして主に仕えるのです。この2年間の奉仕は,皆さんの人生の最初の20年で与えられた時間の什じゅう分ぶんの一をささげることであると,わたしは常々感じていました。また,専任宣教師として奉仕できなかったとしても,将来いつか適切な時期に神殿に参入できるよう備えることができます。そこで神聖な聖約を交わし,永遠の祝福を受けられるようになるのです。

今こそ訓練と教育を受ける備えをし,職業に就くための準備をする時です。アロン神権を持つ若い男性の皆さんは,人生の準備段階にいます。皆さんは,今,学校で熱心に勉強するなら,ヒンクレー大管長が皆さんの将来を見据えて語った,「できるかぎり高い教育を受けるように」という勧告に従うことになります。3学校や仕事において最善を尽くすことを,今,決意してください。そうすればチャンスが訪れたとき,それを受け入れ,最大限に役立てる備えができているでしょう。「各人に……一つの賜物が与えられる」4ということを忘れてはなりません。自分の賜物や才能を伸ばしてください。若い男性の皆さん,皆さんが将来さらに大きな機会や責任を引き受ける備えとなるようなクラスや訓練プログラム,仕事を,祈りの気持ちで選択するようにしてください。

今こそ従う時です。前世でわたしたちは神の御心の一部だけに従うと約束したのではありません。永遠の計画のどの部分に従うかをえり好みしたのでもありません。わたしはこのことを飛行訓練の中で,初めて夜の単独飛行をしたときに学びました。そのとき,わたしたち全員は「夜,アクロバット飛行をするな。君たちは航空計器による飛行訓練をしていない初心者パイロットである」という指示を受けました。しばらくして,それまで常に優秀なパイロットであった,かけがえのない友人が,その命令に背くことを選びました。彼はテキサスの夜の上空を宙返りや横転をしながら飛んでいるとき,操縦席上の透明な円えん蓋がいの外に見えるのは星だと思っていました。しかし,彼が見ていたのは,実は地上にある油田採掘機のライトだったのです。彼の方向感覚は狂ってしまっていました。逆さまになっていたにもかかわらず,飛行機にかかる重力加速度の影響で,自分が正しく上を向いていると思い込んでいました。そして,夜の上空をもっと高く飛ぼうと操そう縦じゅう桿かんを引いたとき,彼は地面を目がけて突進し,下の油田の瞬く明かりの中へと墜落してしまいました。

飛行機を操縦しているとき,角度にしてわずか1度分だけ機体の向きを変えたとしたら,方向感覚をつかさどる内耳はその変化を感じ取ることができません。あらゆる年齢の兄弟の皆さんに申し上げます。従う戒めをえり好みしていると,主との関係は変わってしまいます。それは通常,少しずつ少しずつ変わってしまうのです。人を欺くようなサタンの力が及んだとしても,それを感じ取ることができず,霊的な方向感覚は狂ってしまいます。安全な方向に進んでいるように見えても,ほんとうは大きな不幸に向かっていることがあるのです。前世において,主に従うというわたしたちの決意は完全なものでした。現世の試しの生涯において主に完全に従うことによって,わたしたちはそれぞれ天の御父のみもとに帰ることができるのです。

今こそ時間を有効に使う時です。「現世は人が神にお会いする用意をする時期である。」5若いときに賢明に時間を使うことを学ぶなら,地上にいる時間は十分であることを証します。「わが子よ,忘れずに若いうちに知恵を得なさい。まことに,神の戒めを守ることを若いうちに習慣としなさい。」6

今こそ自分の生得権を守る時です。人生の終わりが近づいたとき,旧約聖書の預言者ヤコブは息子たち一人一人に父親の祝福を授けました。ルベンは長子であり,彼だけに与えられる特別な祝福である生得権を持っていました。しかしルベンへの祝福の中で父のヤコブはこのように言いました。あなたは「移り変わる水のようだから,もはや,すぐれた者ではあり得ない。」7移り変わる水のようだからという言葉の意味を少し考えてみましょう。水は熱くなると蒸発します。冷たくなると凍ります。水路がないと,立ちはだかるものを浸食し破壊します。

アロン神権を持つ者として,皆さんにも生得権があります。どうか従順で堅固であってください。救い主に従うという決意を固く保つようにしてください。福音に従って生活するに当たって,岩のように堅固であってください。だれもわたしたちを待ち受けている祝福のすべてを知りません。これらの祝福を失うたった一つの方法は,不従順によって放棄することです。この世のもののために永遠の受け継ぎを放棄しないでください。わたしたちの輝かしい生得権を尊び,守り,享受するため,今従順になり,備えましょう。

若い男性の皆さん,皆さんは主の軍勢のきわめて大切な力であり,末日における若き戦士です。8「あなたがたは,何であろうとまいたものをまた刈り入れるからである。」9皆さんにお願いします。すばらしい収穫が前途に待ち受けていることについて熟慮し,皆さんがこれから迎える10年の間にどのように決断を下すのか深く考えてください。

刈り入れの律法は,決断を下すうえでの基本です。自分が神の息子であるという自覚を持ち,土壌を整える農夫のように,祈りを通して自分自身を整えてください。理にかなった忠告を与えてくれる人々に相談し,聖霊の導きを求めることによって種を植えてください。霊感の種が育つようにしてください。皆さんがすべきことについて,心に浮かぶ霊的な考えやアイデアに注意を向けるようにしてください。成熟には時間を要します。自分が正しい決断をしているかどうか,祈りによって天の御父に問うとき,霊感による光は,霊的な収穫をもたらしてくれます。光に従うとき,暗くら闇は消え,その光は「ますます輝きを増してついには真昼」10となります。その日には,わたしたちは天の御父のみもとにいるのです。

最後に,「そこにいてください」と申し上げます。わたしたちが今享受している偉大な幸福の計画を選ぶ天上の会議において,わたしたちは皆「そこに」いたのです。若い男性の皆さん,皆さんが自分自身に,家族に,ビショップに,雇用主に約束をしたなら,必ず「そこにいてください。」教会やミューチャルにいるべき時間に,神権の責任を果たすべき時間にそこにいてください。」学校や訓練プログラムの卒業式のときに,「そこにいてください。」宣教師として奉仕する時期に,「そこにいてください。」あなたが最も愛する若い女性が神の神聖な神殿の聖壇にひざまずくときに,「そこにいてください。」(証人としてではなく。)家族が日の栄えの王国に集まるときに,「そこにいてください。」この地上での生涯を終え,栄光をもって帰還するあなたを救い主が出迎えてくださり,天の御父が愛の御み腕うでに抱こうとあなたを待ち受けていてくださるときに,そこにいてください。」

決意の10年間の後は,さらに前進してください。「立ち上がれ,神の男たちよ!」11信仰深い夫,父親となってください。忠実であってください。立ち上がって,自分を支持し支えてくれるふさわしい神の娘にふさわしくなりましょう。主を敬うように,彼女たちを敬いましょう。

天の御父は,力強い王の軍の一員である皆さんが一致した勇敢な強い戦士として,また司令官であるキリストに従う戦士として,今晩ここに集っていることを知っておられます。そのことを証します。主の戦士として,喜びの歌を歌いましょう。「勝利よ,勝利よわれらに主あり勝利よ,勝利よ主により勝たん。」12主はそこにいらっしゃいます。主はわたしたちがみもとに来るよう望んでおられます。主はわたしたちを導き,勝利に導いてくださいます。そのことを,イエス・キリストの御名により証いたします。アーメン。