2010–2019
勇気ある子育て
2010年10月


勇気ある子育て

世の人々がほんとうに必要としているのは,母親や父親がはっきりとした態度で率直に話し,雄々しく子供を育てることです。

,わたしは10代の子供をお持ちの親に向けて話します。聡明で活力にあふれた若人は教会の未来です。だからこそ,敵対者の第一の標的でもあります。忠実な母親,父親の皆さんの多くは,今日こうして総大会の話を聞きながら,この大切な時期に子供たちを導けるよう答えを祈り求めています。わたしも最年長の孫たちが最近10代になりましたから,今日のテーマはわたしにとっても大切です。完全な親などいませんし,簡単な答えなどありませんが,信頼できる真理の原則があります。

若い男性と若い女性の2010年のミューチャルのテーマは,ヨシュア記から取られています。こう始まります。「強く,また雄々しくあれ。……恐れてはならない……。」(ヨシュア1:9)聖典から引用されたこの言葉は,親にも当てはまるテーマではないでしょうか。この末日にあって,世の人々がほんとうに必要としているのは,母親や父親がはっきりとした態度で率直に話し,雄々しく子供を育てることです。

少しの間,想像してみてください。皆さんの娘が線路の上に座っているとします。列車の警笛が聞こえます。線路から離れるよう警告しますか。それとも,過保護だと思われるのが心配で,しますか。娘が警告を無視したら,急いで安全な場所に移動させますか。もちろんそうするでしょう! ほかのどんな心配よりもまず娘への愛が勝るでしょう。一時的に良く思われることよりも娘の命を大切にするでしょう。

試練と誘惑は10代の子供たちに貨物列車のようなスピードと勢いで襲いかかっています。家族の宣言にもあるように,親は子供を保護する責任があります。1 これは,物理的にも霊的にも保護する責任があるということです。

モルモン書には,息子アルマが義の道から迷い出た息子に助言を与える様子が記録されています。コリアントンはゾーラム人の間で伝道中,重大な過ちを犯しました。アルマは彼を愛していたので,この問題について実に率直に語っています。アルマは息子が行った不道徳な行為に対して深く失望していることを伝え,罪がもたらす重大な結果について説明しました。

わたしはアルマの勇気ある言葉を読む度に心を動かされます。「それで,主のはわたしに,『あなたの子供たちが……善を行うことを彼らに命じなさい』と言われる。したがって,わが子よ,わたしは神を畏れてあなたに命じる。罪悪から遠ざかりなさい。」(アルマ39:12)父親からこのような指導を早めに受けたことが,コリアントンにとって転機となりました。その後,彼は悔い改めて忠実に働いたのです(アルマ42:31;43:1-2参照)。

アルマの模範とは対照的な別の父親の例を聖典から紹介しましょう。それは旧約聖書に登場するエリです。エリは預言者サムエルが子供のころイスラエルで大祭司を務めていました。聖典には主が彼を厳しく非難された理由が次のように記されています。「その子らが神をけがしているのに,彼がそれをとめなかったからである。」(サムエル上3:13)エリの息子たちはまったく悔い改めませんでした。そして,イスラエル全体がその愚かな行いのために苦しみました。エリの物語から,子供を愛しているなら,子供の言いなりになってはいけないということを学ぶことができます。

数年前の総大会で,ジョー・J・クリステンセン長老は,次のように指摘しています。「子育ての目的は人気コンテストで1位になることではないのです。」2 同様のことをロバート・D・ヘイルズ長老も述べています。「わたしたちは時々恐れを抱くことがあります。怒らせるのではないかと恐れて子供への助言を躊躇するのです。」3

何年も前に,17歳になる息子が友達と一緒に週末旅行へ行きたいと言いました。皆良い子ばかりでした。息子は許可を求めてきました。行かせてあげたかったのですが,何となく不安を感じました。妻に話すと,同じように不安を感じると言うのです。「その警告の声には耳を傾ける必要があると思うわ」という答えが返ってきました。

当然のことながら,息子はがっかりして,なぜ行かせたくないのか聞いてきました。わたしは正直に,理由は分からないと答えました。「良い気持ちを感じない,それだけのことなんだよ。君のことをほんとうに愛しているから,その気持ちを無視することができないんだ。」息子からは意外な答えが返ってきました。「いいよ,お父さん,分かった。」

子供は親が思う以上に理解力があります。なぜなら,わたしたちと同様に聖霊のを授かっているからです。御霊が語るとき,子供はそれを理解しようと努めています。そして子供はわたしたちの模範を見ています。御霊の促しに注意することや「良い気持ちを感じない」ならばやめたほうがいいということを,わたしたちから学んでいるのです。

子育てに関する決定を下す際にとても大切なのは,夫婦が一致することです。両親のうちいずれかが良い気持ちを感じないなら,許可すべきではありません。例えば,映画,テレビ番組,ビデオゲーム,パーティー,ドレス,水着,あるいはインターネットを使った活動について,どちらかが不安を感じるようであれば,勇気を出しての意見に賛成し,「だめ」と言ってください。

ある悲嘆にくれている母親からの手紙を紹介したいと思います。彼女の10代の息子は少しずつ御霊を失い,教会の活動から遠のいていきました。どうしてそうなったのかを母親は次のように説明しました。「息子が10代の間,わたしは心配ばかりしていました。暴力的なビデオゲームをやめさせようと努めたのです。夫に話し,この種のゲームについて警告している『エンサイン』や新聞の記事を見せました。ところが,夫は大して気にしませんでした。麻薬をやっているわけじゃあるまいし,心配しなくてもいいと言うのです。ゲームのコントローラーを隠したこともありましたが,夫はいつも息子に返していました。そうこうするうちに,戦うより……降参した方が楽になってきました。実のところ,パソコンゲームには麻薬とまったく同じように依存性があるとわたしは感じています。こんな経験はほかの親の皆さんに絶対にしてほしくありません。」

兄弟姉妹の皆さん,皆さんの伴侶が何か良い気持ちを感じられない場合には,その気持ちを尊重してください。安易な道を選んで何も言わないでいたり何の行動も起こさないでいるうちに,破滅的な行動に至ることもあるからです。

結婚の準備ができるまで恋愛関係を延期するよう親が子供に教えることによって,多くの悲惨な状況を回避することができます。未熟なままに異性の友達とカップルになるのは危険です。いわゆる「カップル」になると恋愛感情が高まり,その結果,肉体的にも親密になることが多いからです。サタンはこのような流れを知っていて,それをうまく利用します。サタンは若い男性に伝道を思いとどまらせたり,神殿結婚を妨げたりするためならどんなことでもするのです。

サタンがその目的を達成する前に,親が率直に話し,間に入る勇気を持つことが大切です。ボイド・K・パッカー長老は,こう教えています。「道徳にかかわる場合には,警告の声を上げる権利と義務の両方があります。」4

わたしがずっと信じてきたことは,深夜にほんとうに良いことは決して起こらないことと,若人は何時に帰宅するよう期待されているかを知る必要があることです。

親が夜寝ずに子供の帰りを待つことには大きな知恵があります。若い男性や女性は,その晩の自分がしたことについて話を聞き,お休みのキスをするまでは親が寝ないで待っていることを知っていれば,はるかに良い選択をするものです。

多くの文化に見られるある習慣に対して個人的な警告を発したいと思います。それは友人宅での「外泊」あるいは「夜明かし」の習慣です。ビショップ時代に,わたしはあまりにも多くの若者が「外泊」中に初めて知恵の言葉あるいは純潔の律法を破ることに気づきました。家から離れて夜を明かしているときに,初めてポルノグラフィーを目にしたり,初めて警察の厄介になったりすることがあまりにも多いということです。

子供たちは親の影響から離れているときや夜遅くて誘惑に対する警戒心が弱くなっているときに,仲間からより大きな圧力を受けるようになります。泊まりがけの活動に不安を感じたら,恐れることなく,その内なる警告の声に耳を傾けてください。親としてかけがえのない子供たちを守らなければならないときには,いつも祈ってください。

勇気ある子育ては必ずしも「だめ」と言うことばかりではありません。親には近代の預言者の助言に「はい」と言う勇気も必要です。教会の指導者は家庭の中に義にかなったパターンを確立するようにと勧めています。若人を強化する5つの基本的な習慣について考えてください。それは家族の祈り,家庭での聖典学習,家庭の夕べ,家族で一緒に取る夕食,一人一人の子供に対して行う定期的な面接です。

何をしていようと子供たちを集め,家族としてひざまずくには勇気が必要です。テレビやコンピューターを消し,家族が毎日聖典を開いてページをめくるよう導くには勇気が必要です。月曜日の夜を家族のために取っておけるよう,その日の夜に行われる様々な招待を断わるには勇気が必要です。過密なスケジュールを避けて,家族が一緒に夕食を取れるようにするには勇気と自制心が必要です。

息子や娘に影響を与える最も効果的な方法の一つは,個人面接の中で助言を与えることです。じっくりと耳を傾けることで,子供の心の奥底にある望みを見いだし,義にかなった目標を立てられるよう導くことができます。また,子供たちについて自分たちがどんな霊的な導きを受けたかを伝えることもできます。助言を与えるには勇気が必要です。

想像してみてください。この5つの義にかなったパターンが常にすべての家庭で実行されたら,若者たちはどうなるでしょうか。ヒラマンの軍隊のように,無敵になるのではないでしょうか(アルマ57:25-26参照)。

末日において10代の子供たちを育てるのは,非常に大きな責任です。サタンとその手下たちは,懸命にこの世代の人たちの霊性を引き下げようとしています。一方,主は勇敢な親が子供たちを引き上げるよう期待しておられます。親の皆さん,「強く,また雄々しくあれ。……恐れてはならない,おののいてはならない。」(ヨシュア1:9)わたしは神が皆さんの祈りを聞き,こたえてくださることを知っています。主が勇気ある親たちを支え,祝福されることをします。イエス・キリストのによって,アーメン。

  1. 「家族――世界への宣言」『リアホナ』2004年10月号,49参照

  2. ジョー・J・クリステンセン「れた世にあって子どもを育てる」『聖徒の道』1994年1月号,13

  3. ロバート・D・ヘイルズ「『優しい親の情を込めて』 家族への希望のメッセージ」『リアホナ』2004年5月号,90

  4. ボイド・K・パッカー「現代の道徳的環境」『聖徒の道』1992年7月号,71