ライブラリー
第24課:ノーブーからの退去と西部への旅


第24課

ノーブーからの退去と西部への旅

はじめに

ブリガム・ヤングの霊感を受けた指導の下でノーブー神殿の建築を完了させた聖徒たちは,ロッキー山脈の新しい生活の地への困難な旅を始める前に,この神殿で神聖な聖約を交わしました。これらの神殿の聖約は,聖徒たちがその道のりで困難に直面したとき,彼らに力と霊感を与えてくれました。これらの忠実な聖徒たちの遺産の継承者として,わたしたちは彼らの模範から学び,他の人々が福音の祝福を享受するための道を備えることができます。

背景となる読み物

  • ゴードン・B・ヒンクレー「信仰に忠実に」『聖徒の道』1997年7月号,74-77

  • M・ラッセル・バラード「旅について何も恐れる必要はない」『聖徒の道』1997年7月号,68-71

  • (『時満ちる時代の教会歴史生徒用手引き』第2版(教会教育システム手引き),302-314329-336

教えるための提案

ノーブー神殿の完成

画像
〔ノーブー神殿の画像〕
画像
〔イリノイ州ノーブー神殿の画像〕

元のノーブー神殿の写真,または新しいイリノイ州ノーブー神殿(『福音の視覚資料集』118番を参照)を掲示します。末日聖徒がノーブーを去った後,彼らが建築した神殿は1848年の火災で全焼し,次に1850年の竜巻で完全に破壊されたことを生徒たちに話します。それから約150年後,元の神殿と非常に似通った新しい神殿が建築され,2002年6月に奉献されました。

ジョセフ・スミスの殉教後,聖徒たちは元のノーブー神殿をできるだけ早急に完成させるため,十二使徒定員会の指示の下で働いたことを説明します。次の声明を掲示し,一人の生徒に声に出して読んでもらいます。他の生徒たちには,ノーブー神殿を建築するために聖徒が払った犠牲について注意して聞いてもらいます。

「1,000人以上の人々が10日おきに労働奉仕をしている。まだ少女であったルイーザ・デッカーは母親が食器とベッドキルトを売って神殿のために献金したことを印象深く覚えている。他の末日聖徒は,馬や馬車,牛,豚,穀物を神殿建設のためにささげた。ノーブーの女性たちは小銭を神殿基金としてささげるように求められた。」(『わたしたちの受け継ぎ 末日聖徒イエス・キリスト教会歴史概観』53

エリザベス・テリー・カービー・ハワードは,たった一つの所持品をささげました。それは最近亡くなった夫の腕時計でした。「わたしは,ノーブー神殿(の建築)を助けるために時計をささげ,わたしがこの世で持っていた手放すことができるあらゆる物と最後の数ドルをささげました。全部で50ドル近くになりました。」(キャロル・コーンウェル・マドセン,In Their Own Words: Women and the Story of Nauvoo〔1994〕,180で引用)

増え続ける聖徒への迫害と,教会に敵対する者からの脅しのため,1845年9月24日,教会の指導者は次の春に聖徒たちがノーブーを去ることを発表しました。生徒に質問します。

  • ノーブーを去るという判断は,聖徒たちの神殿を完成するという努力にどのように影響したと思いますか。

イリノイ州を去らなければならないことを知っていても,聖徒たちはそこを去る前に神殿を完成するため,ますます努力したことを生徒に説明します。神殿の部屋は,できるだけ早く儀式を行うことができるように,完成するたびに奉献されました。死の前,預言者ジョセフ・スミスは男性と女性の小さなグループに対して神殿のエンダウメントの儀式を執り行いました。1845年12月10日,これらの男性と女性は,奉献された神殿の部屋で他の教会員のために神殿の儀式を始めました。一人の生徒に次の2段落を読んでもらいます。これには,聖徒たちと指導者が,ノーブーを去る前にできるだけ多くの人が神殿の儀式を受けることができるようにしたことが書かれています。

1844年から1846年,ブリガム・ヤング大管長と十二使徒は,ノーブー神殿の完成を緊急を要する優先事項としました。神殿では,建築が終わる前でさえもエンダウメントと結び固めが行われました。ブリガム・ヤング大管長(1801-1877年)は次のように記録しています。「聖徒たちが心待ちにしていたのは(神殿の)儀式を受けることであり,わたしたちの方ではぜひとも儀式を授けたいと思っていた。そこでわたしは昼夜神殿の中で主の業に自らをささげ,1日平均4時間以上の睡眠は取らず,帰宅するのは週に1度であった。」(History of the Church, 第7巻,567で引用)

神殿で働いた男性会員に加え,「36人の女性がノーブー神殿の儀式執行者となり,1845-1846年の冬中,そこを去る前にできるだけ多くの人に儀式を執り行うため,絶え間なく働いた。36人のうちの一人であったエリザベス・アン・ホイットニーは当時を振り返り,『わたしは神殿で毎日,終了時間になるまで休むことなく働きました。その使命のために,わたし自身,わたしの時間と思いをささげました』と語っている。数十人の他の女性が衣服を洗い,このすばらしい業を肉体的に支える食事を用意した。」(キャロル・コーンウォール・マドセン,“Faith and Community: Women of Nauvoo,” スーザン・イーストン・ブラック,チャールズ・D・テイト・ジュニア編,Joseph Smith: The Prophet, The Man,〔1993年〕,233-234)

1845年12月10日から聖徒たちが西部への旅に出発した日である1846年2月7日までの間に,約5,615人の聖徒がノーブー神殿でエンダウメントの儀式を受け,数多くの家族が結び固められました。

  • すぐにノーブーを去ると知りながら神殿を完成させた聖徒の犠牲から何を学ぶことができますか。(生徒は,神殿の儀式を受けることには,全てを犠牲にして義にかなった努力をする価値があるなど,さまざまな原則を挙げるでしょう。これを強調するためにホワイトボードに書いてもよいでしょう。)

  • アメリカ西部に安全な居住地を求めてノーブーを去り1,000マイル(約1,600キロ)以上の旅をする聖徒たちにとって,神殿の儀式を受けることはどのような準備になったと思いますか。

この質問の助けとするため,サラ・リッチ姉妹と十二使徒定員会のロバート・D・ヘイルズ長老による声明を掲示し,一人の生徒に声に出して読んでもらいます。

画像
〔サラ・リッチ姉妹の画像〕

「もしも主の御霊の影響力と助けにより神殿で授かった信仰と知識がなかったなら,真冬に始めるこの旅はまるで暗闇の中に飛び込むようなものであり,貧しさの中で,死に向かって歩いているようなものだったでしょう。」(サラ・リッチ,Daughters in My Kingdom: The History and Work of Relief Society〔2011年〕,30

画像
〔ロバート・D・ヘイルズ長老の画像〕

「わたしたちの先祖である開拓者たちは,ノーブーで家族として結び固められました。……聖約が,西部への旅の間彼らの守りとなったように,わたしたちにとっても聖約を交わすことは,今現在,そして生涯にわたって守りとなります。 ……

困難や怒りに満ちた暴徒に遭い,ノーブーの快適な家を追われ,長くつらい旅を続けなければならなかった初期の聖徒たちにとって,神殿の儀式に参加することは証を強めるために不可欠でした。彼らは聖なる神殿で力を授けられました。夫と妻は互いに結び固められ,子供は両親に結び固められました。多くの人が旅路の途中で家族と死別しましたが,彼らにとって死が終わりではないことを知っていました。神殿において永遠に結び固められていたからです。」(ロバート・D・ヘイルズ「神殿の祝福」『リアホナ』2014年2月号,53-54)

生徒に質問します。

  • 神殿の儀式を受けることは,西部に向かう長い旅を強いられた初期の末日聖徒にどのような影響を与えましたか。(生徒が答えるとき,神殿の儀式は,苦難と逆境に直面するときにわたしたちに守りと力を与えてくれるという原則を理解できるように助けてください。)

  • 神殿での礼拝は,試練のときにあなたやあなたの知っている人をどのように守り,強めましたか。

主の宮での礼拝を通じてよりすばらしい霊的な守りと力を見いだすために何ができるかを生徒に深く考えてもらいます。

教義と聖約第136章

西部に旅した聖徒への主の指示

画像
〔地図,西部への教会の移動〕

教会歴史地図6「西部への教会の移動」を開き,ノーブーとウィンタークォーターズを見つけてもらいます。過度の降雨と必需品不足のため,1846年2月にノーブーを去った聖徒たちは,アイオワ州を横断する300マイル(約483キロ)の旅に4か月を費やしました。この時期,モルモン大隊として知られるようになった500人を超える末日聖徒の男性たちが,合衆国とメキシコの戦争中,ブリガム・ヤング大管長の呼びかけに応えてアメリカ陸軍での兵役に服しました。このうちの何人かは,妻と子供たちとともに旅をしました。兵役に就くことで,貧しい教会員は西部へ旅するための費用を賄うことができましたが,多くの家族は一時期に夫や父親なしで西へと向かうことになりました。このような理由で,教会の指導者は1847年の春までロッキー山脈に向かう西への旅を中断することを決定しました。聖徒たちは,彼らがウィンタークォーターズと呼んだ場所に居留しました。ブリガム・ヤングが教義と聖約136章に記録されている啓示を受けたのはこの場所でした。

数人の生徒に,交代で教義と聖約136:1-5を声に出して読んでもらいます。残りの生徒たちには一緒に黙読してもらい,主が西への旅を続ける準備のために聖徒に指示された事柄を見つけてもらいます。

  • 部隊はどのように組織されましたか。この組織によって,聖徒たちは旅の途中どんな助けを受けたと思いますか。

  • この組織には,今日教会が組織されている方法とどのような類似点がありますか。(生徒が答えた後,主は,一人一人が導かれ,手助けされるように主の聖徒たちを組織されるという真理をホワイトボードに書きます。)

  • 4節は,聖徒たちが主の御心を達成しようと努力する際にどのようにして力を受けるかについて,何を示唆していますか。

生徒たちに教義と聖約136:6-11を静かに調べてもらい,西部への旅の間,互いに世話をし合い,貧しい人や助けの必要な人たちを援助するために,聖徒たちがどのように組織されることになったかを見つけてもらいます。時間を十分に取ってから,次の質問をして,話し合いを促します。

  • 6-11節で,互いに助け合い,困っている人を助ける聖徒たちの義務を示す言葉や文はどれですか。(6,7,9節にある「備え」「準備」という言葉を強調してもよいでしょう。これにより,「繰り返しに気付く」という聖文研究のスキルに注意を向けることができる。)

  • 11節によると,他の人を助け,彼らのために道を備えようと努力する人に対して主は何を約束されておられますか。(生徒が答えるとき,主は,わたしたちが他の人を助け,その人たちのために道を備えるときにわたしたちを祝福してくださるという原則をホワイトボードに書きます。)

  • 福音の祝福を享受できるようにあなたの道を備えてくれたのは誰ですか。その人達は,あなたの道を備えるために何をしてくれましたか。

「開拓者」という言葉は,他の人が従うための道を備えて開くために先を歩む人と定義することもでき,これはわたしたち全員が何らかの形で開拓者になることができることを意味すると説明してもよいでしょう。少し時間を取って,福音の祝福を享受できるように他の人を助け,その人の道を備えるには何ができるかを生徒に深く考えてもらいます。数人の生徒に考えを分かち合ってもらいます。「主は,神の子供一人一人が福音を受け入れて神のみもとに戻って神とともに住むことができるように,わたしたちが一生を通じて彼らのために道を備えようと努力することを望んでおられる」ということを証します。

これらの聖徒たちが,互いを助け合い,後に続く者のために道を備えることによって主の戒めに従ったことを説明します。開拓者の最初のグループがウィンタークォーターズを去ったのは1847年4月5日でした。彼らは1,000マイル以上を旅して,1847年7月下旬にソルトレーク盆地に到着しました。1847年7月24日,ブリガム・ヤング大管長はソルトレーク盆地に入り,聖徒たちが新しい居住地を見つけたという確認を受けました。

七十人定員会のウィリアム・R・ワーカー長老の次の声明を見せて,それを一人の生徒に声に出して読んでもらいます。

画像
〔ウィリアム・R・ワーカー長老の画像〕

「皆さんが開拓者の子孫であるかどうかにかかわらず,モルモンの開拓者の信仰と犠牲の遺産は,皆さんの受け継ぎでもあります。それは末日聖徒イエス・キリスト教会の気高い遺産だからです。」(「信仰に忠実に生きる」『リアホナ』2014年5月号,97)

  • 教会の各会員が,それぞれの先祖にかかわらず,「モルモンの開拓者の信仰と犠牲の遺産」が自分たちの遺産であると理解することが重要なのはなぜだと思いますか。

  • モルモンの開拓者の旅について学ぶことは,他の人に奉仕し,天の御父のみもとへ戻る旅を助ける今日の教会員に対し,どのように霊感を与えることができますか。

ゴードン・B・ヒンクレー大管長(1910-2008年)の次の声明を見せて,一人の生徒に声に出して読んでもらいます。

画像
〔ゴードン・B・ヒンクレー大管長の画像〕

「今日,わたしたちは彼らが尽くした大いなる働きの恩恵に浴しています。皆さんとともに,彼らに感謝したいと思います。彼らがわたしたちのためにしてくれた全てのことに対し,心からの感謝の念を持ちたいと思います。 ……

愛する兄弟姉妹の皆さん,わたしたちは何と恵まれていることでしょうか。何というすばらしい受け継ぎを得ていることでしょうか。その中には,永遠の父なる神とその御子であるよみがえられた主イエス・キリストの犠牲,苦しみ,死,示現,信仰,知識,証も含まれます。 ……

わたしたちは真理の大義の中でよく奉仕することにより,先人たちに最高の誉れを与えることができます。」(「信仰に忠実に」『聖徒の道』1997年7月号,74-77)

教会の全ての会員が,福音の祝福を受けるために道を備えてくれた人によって祝福されているということを生徒に思い出してもらいます。自分の子孫を含む人達が,天の御父,そしてイエス・キリストへの信仰を持って従順に生きるために道を備えるには何ができるかを考えるように生徒を励まします。

生徒用資料

  • 教義と聖約第136章

  • ゴードン・B・ヒンクレー「信仰に忠実に」『聖徒の道』1997年7月号,74-77