聖約を守ることにより神を尊ぶ
ジョセフ・W・シターティ長老
七十人
神を信じる信仰の最大の祝福は，聖約を守ることで神を尊ぶことによりもたらされます。
1985年，ケニヤのナイロビで，シターティ姉妹とわたしはロジャー・ハワードという名の男性に会いました。彼とその奥さんであるアイリーンは，当時，夫婦宣教師として奉仕していました。二人に招かれ，その自宅で開かれる小さな集会に出席しました。末日聖徒イエス・キリスト教会の会員の集会に出席したのは，それが初めてでした。わたしたちは，その初めての集会で御霊を感じ，それ以来，毎週教会に出席しています。
数か月後，わたしたちは9歳の息子とともに，ロジャーからバプテスマを受けました。その後間もなくして，ロジャーとアイリーンは伝道を終え，帰国しました。二人は数年に1度は便りをくれました。
2010年の初めに，シターティ姉妹とわたしは，やっとのことでロジャーと再会しました。ロジャーは90歳近くになっていました。高齢と病でやつれ果て，歩行器にしっかりと寄りかからずにはいられない状態でした。本当に久しぶりで顔を合わせたわたしたちは，互いに表現しがたいほどの喜びを感じました。そのような思いを込めて抱き合ったとき，涙がとめどもなく流れ落ちました。互いに対して，また福音の驚くべき賜物に対して深い感謝の念を抱きました。神の王国の同じ民として，わたしたちの信仰は一つでした。
そのとき喜びに満たされていると，わたしの心に次の聖句が思い浮かびました。「人の価値が神の目に大いなるものであることを覚えておきなさい。……
あなたがたはこの民に悔い改めを叫ぶことに生涯力を尽くし，一人でもわたしのもとに導くならば，わたしの父の王国で彼とともに受けるあなたがたの喜びはいかに大きいことか。〔教義と聖約18：10，15〕
神の最大の祝福の幾つかは，人々を神の王国に導く人に約束されています。救い主はその思いを次のように明かしておられます。「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだのである。そして，あなたがたを立てた。それは，あなたがたが行って実をむすび，その実がいつまでも残るためであり，また，あなたがたがわたしの名によって父に求めるものはなんでも，父が与えて下さるためである。」（ヨハネ15：16）
ロジャーはその数か月後，この世に別れを告げました。神とともにあって平安な人生だったに違いないとわたしは感じました。ロジャーは福音を分かち合うことで，わたしたちの人生に深い影響を及ぼしました。同胞に対する彼の献身的な奉仕の模範，さらには教会で奉仕する大勢の若い宣教師と夫婦宣教師の模範から，神を尊ぶ一つの方法を知ることができます。
聖約による神とのつながり
イエス・キリストの回復された教会の会員であることにより，わたしたちはそれぞれ，聖約を通して天の御父と揺るぎない個人的な関係を持つことができます。それぞれの聖約は儀式により確かなものとなります。儀式を通して，わたしたちは喜んで聖約を受け入れ，守ろうと決意します。わたしたちは主を信じる信仰を行使するとき，イエス・キリストの贖罪により，それぞれの聖約に含まれる務めを果たすことができます。
全ての救いの聖約と儀式を交わし，守ることにより天の御父との関係を深めるときに，わたしたちは天の御父を尊びます。御父は聖約を守る人に，祝福として，導きと力を与える御霊を注いでくださいます。以下に，わたしたちと天の御父の関係を強固にする最も大切な聖約を紹介します。
バプテスマの聖約
バプテスマは，わたしたちと神の関係を強固にする最初の聖約です。その儀式を受けるのにふさわしくなるのは，「神の前にへりくだって，……打ち砕かれた心と悔いる霊をもって進み出て，自分のすべての罪を心から悔い改めたことと，……自分の罪の赦しを得るようにキリストの御霊を受けたことを〔わたしたちの〕行いによってまことに明らかにする」（教義と聖約20：37）ときです。
わたしたちは「最後までイエス・キリストに仕える決心をして進んでイエス・キリストの名を受け」（教義と聖約20：37），「重荷が軽くなるように，互いに重荷を負い合うことを望み，……悲しむ者とともに悲しみ，慰めの要る者を慰めることを望み，……いつでも，どのようなことについても，どのような所にいても，死に至るまでも神の証人になることを望〔む〕」（モーサヤ18：8－9）ことを行動によって示すとき，聖約を守っていることになります。
それに対して，神はわたしたちを尊び，聖霊の賜物を授けてくださいます。聖霊の賜物によりわたしたちは，あらゆる面で導きを与えて永遠の命へ導いてくださる聖霊を，常に伴侶とすることができるのです（モーサヤ18：9－10参照）。
わたしはバプテスマを受けた後，御霊に満たされて深い喜びを感じました。それ以来，神を特に近くに感じるときは，その気持ちがずっと続いています。
神権の誓詞と聖約
バプテスマの聖約を守る男性は神権の誓詞と聖約を交わす資格を得ます。わたしたちは按手の儀式を通してその聖約を受けます。神権の聖約は，神の子供たちを救うための奉仕の聖約です。わたしたちは召しを尊んで大いなるものとするとき（教義と聖約84：33参照），また「〔わたしたち〕の心と，勢力と，思いと，力を尽くして神に仕え」（教義と聖約4：2）「神の栄光にひたすら目を向けて，信仰，希望，慈愛，愛」（教義と聖約4：5）をもってそうするときに，神を尊ぶことができます。
忠実な神権者にもたらされる主の祝福には，「御霊により聖められてその体が更新される」（教義と聖約84：33）ことも含まれます。彼らは，モーセやアブラハムの祝福を受け継ぐ者となるのです（教義と聖約84：34参照）。末日の預言者と使徒たちは，神権を尊んで大いなるものとしている人の良い例です。彼らの人生を見れば，主が彼らを尊んでおられることが分かります。
神殿の儀式と聖約
大神権を持つふさわしい男性と，ふさわしい女性は，神殿で神聖な儀式を受けて聖約を交わすことができます。神殿の儀式と聖約を通して，わたしたちは現世の目的を理解し，永遠の命に備えることができるようになります。儀式を受け，永遠の結婚の聖約，さらには家族との結び固めの聖約を交わします。わたしたちの命を，神と神の全ての子供たちを救う業に奉献すると決意します。これらの聖約を忠実に守ることによって，わたしたちは現世における試しを克服し，昇栄，すなわち神がその子供たちにお与えになる最も大いなる祝福を得るための霊的な導きと力を受けることができます（教義と聖約14：7参照）。昇栄，すなわち永遠の命とは，家族として，天の御父が送っておられるような崇高な生活にあずかることです。
聖餐
「最も大いなるもの」デル・パーソン画
教会員は，毎週の安息日に，ふさわしい状態で聖餐を受ける必要があります。この儀式を受けることで，わたしたちは続けて，また喜んでイエス・キリストの御名を受け，決意を新たに全ての聖約を守ることを確認します。最後まで堪え忍び，義にかなった生活を送ることができるよう，イエス・キリストの贖罪の力を呼び求めます。そうすることで，わたしたちは自らが交わした全ての聖約に伴う全ての祝福にふさわしくなります。
義にかなった望み
聖約を破ることは神に背くことであり，約束された祝福を受けられなくなります（教義と聖約82：10参照）。
サムエル記上第2章12－17節，22－34節から，わたしたちは祭司エリの息子たちが行った罪悪について学ぶことができます。この二人の息子は父親の地位を利用して，神権の聖約を破りました。女性参拝者との不道徳な行為にふけり，イスラエルの民がささげた犠牲の肉を不正な方法で独り占めにすることにより，みだらな欲望を満たそうとしたのです。主はエリの息子たち，また彼らを制し切れなかったエリ自身に対して，厳しい裁きを下されました。
そのような肉の欲望は，エジプトにおけるヨセフがみだらな不信者に対して取った行動からも分かるように，神との聖約を守ると決意することで克服できます（創世39：9，12参照）。神はヨセフを尊び，ヨセフが自分の前に立ちはだかる全ての悪だくみを克服できるようお助けになりました。彼はエジプトで2番目に影響力のある人物となり，神の御手に使われて，イスラエルの氏族を守るまでになりました（創世45：7－8参照）。
誘惑に負けてしまっても，天の御父との関係を回復したいという望みがあれば，心からの悔い改めへと導かれます。そして，救い主イエス・キリストの贖罪は，わたしたちがもう一度ふさわしくなるよう助けてくれます。
預言者に従う
キリストは御自分の教会を建てられたとき，使徒，預言者，伝道者，牧師，教師をお選びになりました。それは「キリストのからだを建てさせ，
わたしたちすべての者が，神の子を信じる信仰の一致と彼を知る知識の一致とに到達し，全き人となり，ついに，キリストの満ちみちた徳の高さにまで至るためで〔した〕。」（エペソ4：12－13）
また教会の預言者と使徒は次のように教えています。「家庭生活における幸福は，主イエス・キリストの教えに基づいた生活を送るときに達成されるに違いありません。実りある結婚と家庭は，信仰と祈り，悔い改め，赦し，尊敬，愛，思いやり，労働，健全な娯楽活動の原則にのっとって確立され，維持されます。」（「家族—世界への宣言」『リアホナ』2010年11月号，129）
わたしたちの家庭と家族は，聖約に基づく神との強い関係を築くための土台を提供してくれます。生ける預言者の霊感された教えに従うならば，わたしたちは強い家族を築き，戒めを守る力を得，信仰がもたらす最大の祝福を確かなものとすることができます。