2018
おじいちゃんのくつや
April 2018


おじいちゃんのくつや

このお話を書いた人は,アメリカ合衆国ユタ州に住んでいます。

「いいかい,わたしたちはもっとこのくつのようにならないといけないんだよ」とおじいちゃんが言いました。

「『ごめんなさい』と言うのはむずかしいときもあります」(Children’s Songbook 98

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おじいちゃんのくつや

ミゲルは,おじいちゃんがやっているくつやのドアを開けました。おじいちゃんがくつを作るのに使っていた,皮のにおいをかぎました。それはミゲルの大好きなにおいでした。

「こんにちは,おじいちゃん!」

おじいちゃんはひざまずいて,お客さんの足の形を紙に写していました。おじいちゃんは顔を上げませんでした。耳が遠いのです。

ミゲルは,仕事用のベンチにすわりました。切った皮が積んであるのを見ました。トンカチやペンチを使ってこの1枚1枚の皮からどんなくつを作るのだろうと想像しました。

道具を見て,ミゲルは好きな物を思い出しました。おじいちゃんは,ミゲルがそうじを手伝うたびに,キャンディーをくれたのです。

でも,ミゲルは今,おなかがすいていました!おじいちゃんに聞かずに,自分でお菓子を取るのはよくないと知っていましたが,見るとおじいちゃんはしばらくいそがしそうです。「待たなくてもいいんじゃないかな」とミゲルは思いました。

ミゲルはカウンターの下にある,キャンディーの入ったびんに手をのばしました。その中には,あまいのとか,チリパウダーのついたからいのとか,ミゲルの大好きなキャンディーがたくさん入っていました。びんのふたを開けたとき,ちょっといやな気持ちがしました。でも,キャンディーはすごくおいしそうに見えました。ミゲルは急いで口の中に入れました。

間もなく,お客さんが帰りました。おじいちゃんは1枚の皮を取ると,水にひたしました。そうすることで,皮がやわらかくなり,あつかいやすくなるのです。

ミゲルはできるだけ急いで,残りのキャンディーを飲みこみました。それから,おじいちゃんの所に歩いて行きました。

「こんにちは!」おじいちゃんはニコニコしながら,「会いに来てくれてうれしいよ」と答えました。

ミゲルはおじいちゃんをだきしめました。キャンディーを食べたことが,おじいちゃんにばれないといいなと思いました。ミゲルは心配をはらいのけました。

「今日はいそがしそうだね」と言って,ミゲルはたくさん積まれた皮を指さしました。「手伝えることはある?」

「いいよ!「もちろんさ!

糸を取ってくれるかい?」ミゲルは長い糸に手をのばしました。両手で引っぱってみると,見た目よりもしっかりしていました。

「わあ,すごく強いね。」

おじいちゃんは,楽しそうに笑いながら,そりゃあ,強くないといけないんだよ。一生長持ちするようにね」と言って,おじいちゃんは糸を皮に通しました。それから,お母さんが時々「かしこいおじいちゃん」とよんでいる顔になりました。

「いいかい。わたしたちはもっと,このくつのようになる必要があるんだよ。」おじいちゃんがうなずきながら言いました。

ミゲルは皮をちらっと横目で見ました。「えっと。そうなの?」

「そうだよ。強くなければいけないんだ。そうすれば,サタンのゆうわくにも負けずにいられるんだよ。」

ミゲルの頭に,赤いキャンディーが思いうかびました。おじいちゃんに話した方がいいと分かりました。

おじいちゃんは,たなから古いくつを片方取り出しました。「この大きなあなを見てごらん。」

ミゲルの手がすっぽり入ってしまうほど大きなあなでした。「うん。」

「このあなは,前は小さくて簡単に直せるくらいだったが,そのままほうっておいたから,直すのはもっとむずかしくなってしまったんだよ。悪い習慣や悪い選びは,このあなににているんだよ。早くに直した方がいいのさ。」

おじいちゃんはもう一度うなずくと,またいつもの笑顔にもどりました。二人でおしゃべりしながら,おじいちゃんは仕事を続けました。その間ずっとミゲルは赤いキャンディーのことを考えていました。

おじいちゃんの仕事が終わり,ミゲルは片付けを手伝いました。その後,おじいちゃんはキャンディーのびんに手をのばしました。

ついに,ミゲルはがまんできなくなりました。「キャンディーを1つ取っちゃったんだ!」ミゲルは大きな声で言いました。

おじいちゃんはびんを置きました。「どういうことだい?」

ミゲルは,だまってキャンディーを取ってしまったことをおじいちゃんに話しました。「ごめんなさい。おじいちゃん!もう二度としません。約束します!」

おじいちゃんはミゲルをギュッとだきしめました。ミゲルは,すごく気分が良くなりました。

「正直に言ってくれてありがとう。それは,わたしにとって何よりも大切だよ。」

家に向かって歩きながら,ミゲルは自分が,おじいちゃんの作った新しいくつになったように感じました。とても強くて,生きる力にあふれている感じがしました!