インスティテュート
第8課:回復のメッセージを教える(第2部)


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回復のメッセージを教える(第2部)

はじめに

回復のメッセージとは,永遠の教義,神権の権能,救いの儀式を含むイエス・キリストの福音が,預言者ジョセフ・スミスを通して地上に回復されたことを意味します。イエス・キリストの回復された福音,つまり全ての福音の神権時代に明らかにされたものと同じ福音を通じて,神の子供全てが永遠の命を受けることができます。宣教師候補者は,背教と回復の概念を明確に理解し,それを簡潔に説明し,力強く証できるよう備える必要があります。

事前準備

教えるための提案

天父とイエス・キリストについてのジョセフ・スミスの示現

トーマス・S・モンソン大管長の説教「神権持つ子らよ」を基にした最初のビデオを見せます。このビデオで,モンソン大管長はエルマー・ポラードの改宗について話しています。

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〔トーマス・S・モンソン大管長の画像〕

「50年以上前,わたしがカナダで伝道部会長として奉仕していたとき,小さな田舎町から来た一人の若い宣教師がいました。彼はトロントの街を見て,その大きさに驚いていました。彼は小柄でしたが,大きな証を持っていました。到着して間もなく,同僚と一緒に,オンタリオ州のオシャワでエルマー・ポラード氏の家を訪問しました。周りの風景が見えなくなるほどの激しい吹雪の中で戸別訪問をしている若者をかわいそうに思ったポラード氏は,宣教師を家に招き入れました。宣教師はメッセージを伝えましたが,彼は御霊を感じませんでした。結局彼は宣教師を追い出し,二度と来ないように言いました。玄関ポーチを出ようとする長老たちを,彼はこう言ってあざけりました。『ジョセフ・スミスが神の預言者だなんて本当は信じていないくせに!』

ドアは閉じられ(ました)。」(「神権持つ子らよ」『リアホナ』2013年5月号,67)

ビデオを見せた後,次の質問をします。

  • あなたがこの宣教師のうちの一人だったら,ポラード氏の家を離れるときにどんなことを考え,どんな気持ちでいたと思いますか。

  • この時点であなたならどうしていたでしょうか。

モンソン大管長の説教の残りが収録されている2番目のビデオを見せます。

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〔トーマス・S・モンソン大管長の画像〕

「長老たちは歩いて行きました。この田舎出身の若者が同僚に言いました。『長老,わたしたちはポラードさんに答えませんでした。彼はジョセフ・スミスが預言者であることをわたしたちが信じてないと言いました。戻って証を伝えましょう。』最初,先輩の宣教師は躊躇しましたが,結局同僚と一緒に戻ることにしました。少し前に追い出されたドアに近づくと,恐ろしさで心臓が止まりそうでした。ドアをノックすると,ポラード氏が出て来ました。重苦しい時間が流れました。その後,御霊から力を受けて,後輩の宣教師が口を開きました。『ポラードさん,あなたは,ジョセフ・スミスが神の預言者であることをわたしたちが本当は信じていないとおっしゃいました。わたしは,ジョセフ・スミスが本当に預言者であったことをあなたに証します。彼は確かにモルモン書を翻訳しました。彼は父なる神と御子イエスに会いました。わたしはそのことを知っています。』

その後しばらくして,ポラード氏はポラード兄弟になり,神権会でこう証しました。『あの夜,わたしは眠れませんでした。あの言葉が耳に鳴り響いていたのです。「ジョセフ・スミスは神の預言者でした。そのことを知っています。知っています。知っています。」翌日,宣教師に電話してまた来るように頼みました。彼らのメッセージと証が,わたしと家族の人生を変えたのです』。」(「神権持つ子らよ」『リアホナ』2013年5月号,67-68)

次の質問をします。

  • 宣教師による預言者ジョセフ・スミスの証がそれほど強力な影響をポラード氏に与えたのはなぜだと思いますか。

生徒に,高価な真珠のジョセフ・スミス─歴史を開いてもらいます。一人の生徒に5-6節を,もう一人の生徒に7-9節を声に出して読んでもらいます。その後,生徒に質問します。

  • どのようにこれらの聖句を一つか二つの文章にまとめることができますか。

一人の生徒にジョセフ・スミス─歴史1:10を声に出して読んでもらいます。生徒がその聖句を読んでいるときに,宗教的な真理を求めたジョセフ・スミスはこれから生徒たちが伝道地で会うことになる多くの人々にどのような点で似ているかを他の生徒たちに考えてもらいます。その後,次の質問をします。

  • どんな疑問が若きジョセフ・スミスの心を煩わせていたでしょうか。

  • ジョセフがどの教会に加わるべきかを決めるのがそれほど難しかったのはなぜでしょうか。

  • どのような点でジョセフ・スミスの疑問は現代社会の人々が抱える疑問と似ているでしょうか。

一人の生徒にジョセフ・スミス─歴史1:11-13を声に出して読んでもらいます。その後,次の質問をします。

  • 霊的な真理を見つける方法について,ジョセフ・スミスはどんな原則を学びましたか。(生徒はさまざまな答えを挙げると思われますが,次の原則を認識できるとよいでしょう。わたしたちが答えを求めて神に祈り,進んで行動するときに,神から霊的な真理を学ぶことができる。

  • 霊的な真理を見つけたいと望む人々を助けるために,ジョセフ・スミスの例をどのように活用することができますか。

ジョセフ・スミス─歴史1:14-19を黙読するように生徒に言います。生徒たちが黙読するときに,彼ら個人の生活と世界に与えた最初の示現の永続する影響について考えてもらいます。静かに聖句を読む時間を与えた後に,次のような質問をします。

  • 天父とイエス・キリストが現れる前に,サタンがジョセフ・スミスを苦しめたことについてどんな理由が考えられますか。(サタンはジョセフが霊的な真理を学ぶのを妨げることで,回復が起こるのを妨害しようとした。)

  • どのようにして最初の示現は大背教の結果を克服する始まりとなりましたか。(次の真理を生徒たちに強調します。最初の示現によって,天は再び開き,回復が始まった。)

  • 最初の示現からどのような教義的な真理を学ぶことができますか。(天父と御子は別々の御方である,天が開いた,わたしたちは啓示を受けることができる,など。)

  • 宣教師が求道者に初めて会うときに最初の示現について教えるよう『わたしの福音を宣べ伝えなさい』が勧めているのはなぜだと思いますか。

  • 天父と御子イエス・キリストが訪れられたことについて学ぶことは,求道者が霊的な真理を探求するのにどのような助けとなるでしょうか。

生徒たちが最初の示現の重要性の理解を深めることができるように,ゴードン・B・ヒンクレー大管長の説教の一部が含まれる「わたしたちの信仰の驚くべき基盤」という表題の配付資料を各生徒に配ります。

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〔基盤の配付資料の画像〕

一人の生徒に,最初の3つの段落を読んでもらいます。その後,次の質問をします。

  • なぜ末日聖徒イエス・キリスト教会の「民の強さ」は,最初の示現が真実であることにあるのでしょうか。(ジョセフ・スミスの示現の話が真実であれば,末日聖徒イエス・キリスト教会が,天父とイエス・キリストの完全な承認と権能を受けた地上における唯一の教会であるという主張も真実であるということを,生徒は理解する必要があります。)

  • ヒンクレー大管長によると,ジョセフ・スミスの業は,それ以前に礼拝の慣習や教義的な教えを改革した宗教指導者たちの業と,どの点において異なるのですか。

生徒たちに数分時間を与えて,資料の続きを全て黙読してもらいます。読むときに,印象に残る言葉や文章に印をつけるように勧めます。生徒が読み終えたら,数人の生徒に自分たちが印をつけた箇所と,なぜそれが印象的だったかを説明してもらいます。次のような質問をするとよいでしょう。

  • ジョセフ・スミスの示現の真実性を受け入れるのが難しい人がいるのはなぜでしょうか。

  • 前回の授業で学習した原則を考慮すると,最初の示現は,神権時代から背教そして回復というパターンにどのように当てはまるでしょうか。(背教の時代に次いで,最初の示現によって回復が始まり,新しい福音の神権時代となった。以前の神権時代のように,神により預言者が召され,福音の真理と神権の権能が回復された。ジョセフ・スミスは「時満ちる神権時代」〔エペソ1:10参照〕の預言者として召された。これは背教によって福音が失われることはなく,キリストの再臨まで福音が地上にとどまることを意味します。)

  • 求道者がこの背教と回復のパターンを理解するのを助けることは,どのようにしてその求道者が最初の示現と現代における福音の回復の現実性を受け入れる助けとなるでしょうか。

生徒たちに『わたしの福音を宣べ伝えなさい』の37ページを開き,最後の3つの段落を黙読してもらい,「回復」によって回復または再構築されたものを見つけてもらいます。それから生徒が見つけたことを発表してもらいます。生徒たちは次の事柄を挙げるようにするとよいでしょう。(1)神権の権能,鍵,儀式が回復された,(2)教会が再度設立された,(3)十二使徒が召された,(4)新しい福音の神権時代が始まった,(5)生ける預言者が召された。

最初の示現と回復の真理とその重要性を生徒が感じられるように,次のような質問に答えてもらいます。

  • 最初の示現は現実であり大切であるという証をどのようにして得ましたか。

  • 最初の示現の証は,イエス・キリストの福音の回復についてあなたが信じていることにどのような影響を及ぼしましたか。

最初の示現と回復についての証を述べたい生徒がいるかどうか尋ねます。

クラスの生徒に,二人一組になってもらいます。そのペアで4人の小さなグループ(各グループに2ペアずつ)を作ります。生徒たちに時間を与えて,最初の示現と回復についての3-4分の短いレッスンを教える準備をしてもらいます。レッスンは簡潔明瞭にするよう生徒たちに伝えます。生徒たちに『わたしの福音を宣べ伝えなさい』の36-37ページまたは『イエス・キリストの福音の回復』という表題の宣教師用小冊子の11-12ページに書かれた内容を見直してもらいます。ジョセフ・スミスの経験について説明するときには,自分自身の言葉で説明するように勧めます(ジョセフ・スミス─歴史1:16-17の部分は聖句の言葉をそのまま使います)。レッスンの終わりには自分の証を述べることを忘れないようにしてもらいます。各グループ内の一つのペアがもう一つのペアに教えます。

生徒たちがレッスンの練習を終えたときに,レッスン中によくできたこと,もう少しうまくできればよかったことを各グループ内で話し合ってもらいます。

次に役割を交代してもらい,教えを受けたペアが今度は教える側になります。お互いにフィードバックを与える時間を取るようにします。全てのペアが教え終わってから,生徒たちにこの経験から得た洞察をクラス全体に発表してもらいます。

ジョセフ・スミスが書いた最初の示現のさまざまな記録について,難解な質問に答える方法を生徒たちが知っておくとよいかもしれません。ジョセフ・スミス─歴史にある最初の示現の記録は,世に公表する公式な教会歴史の一部として,1838年にジョセフ・スミスが書いたものであることを生徒たちに説明します。ジョセフ・スミスは何度かこの経験について記録しているため,最初の示現に関するその他の記録も存在します。それぞれの記録が強調する事柄,詳細において少し違いがあることを生徒たちに説明します。話の繰り返しの中に相違が見られることは,その話が作り話である証拠だと誤って主張する批判者もいます。しかし,人がある経験について数年にわたって異なる聴衆に何度も話を繰り返すとき,毎回強調する点は異なり,それまで出てこなかった詳細が語られることはよくあることです。例として,最初の示現の記録に見られる相違と似た事柄が,パウロがダマスカスへ向かう途中に見た示現についての記録にも見られます(使徒9:3-9;22:6-11;26:12-18参照)。

人にモルモン書を読むよう勧める

モルモン書の序文の最後の二つの段落を一人の生徒に声に出して読んでもらい,この部分のレッスンとの関連性を確立します。モルモン書を読み,深く考え,それが真実であるかを神に問う者に与えられる約束を生徒たちに見つけてもらいます。生徒たちに見つけたことを発表してもらいます。

生徒たちに『わたしの福音を宣べ伝えなさい』の39ページを開いてもらい,一人の生徒に「モルモン書─イエス・キリストについてのもう一つの証」の項の最初の段落を声に出して読んでもらいます。生徒に次の質問をして,この段落が教える原則を見つけられるように助けます。

  • なぜモルモン書は宣教師にとって価値のある強力な道具なのですか。(生徒たちがモルモン書には永遠の福音が収められていること,ジョセフ・スミスが神の預言者であったことの確かな証拠であること,モルモン書はイエス・キリストについてのもう一つの証であることを理解できるよう助けます。)(教義と聖約20:8-11参照)

この教義についての生徒の理解を深めるために,一人の生徒に次の言葉を読んでもらいます。

  • モルモン書は,なぜジョセフ・スミスが神の預言者であったことの確かな証拠なのですか。(ある人がモルモン書が真実であると結論づければ,ジョセフ・スミスが神の指示の下に行動しモルモン書を翻訳したこと,ジョセフ・スミスは神の預言者であったことをその人は認めざるを得なくなる。)

  • 求道者がモルモン書を読み,それが真実であると証を得るときにどのような祝福を受けますか。(求道者はジョセフ・スミスが預言者であること知り,イエス・キリストの福音の回復を受け入れ,救いの儀式を受ける備えができる。)

一人の生徒にモロナイ10:3-5を読んでもらいます。生徒に次の質問をします。

  • モルモン書が真実であるという証を得るにはどのような手順を踏む必要がありますか。(生徒はさまざまな答えを挙げると思われますが,次の原則を認識できるとよいでしょう。わたしたちがモルモン書を読み,深く考え,誠心誠意祈るならば,神は聖霊の力を通してその真理を明らかにされる。

  • 「誠心誠意問う」(モロナイ10:4)とはどういう意味ですか。(聖霊を通して答えを受けることを心から望むことと,受けた答えに応じて行動する決意をすること。)

求道者がモルモン書を読み,その真実性について誠心誠意祈ることがなぜ大切なのかを説明するために,ビデオ“Invitation to Read the Book of Mormon: Jynx”(8分6秒)〔英語〕を見せます。

55秒のところでビデオを止めて,生徒がジンクスを教えている宣教師の一人だとしたらどのようなことを感じるか少し考えてもらいます。何人かの生徒に,自分なら彼女に何と伝えるかを話してもらいます。

ビデオの残りを見るときに,モルモン書が真実であるという証を得るためになぜ求道者が祈らなければならないのかを,クラスの半分の生徒たちに見つけてもらいます。もう半分の生徒たちにはジンクスがモルモン書を読む動機づけとなった宣教師の言葉を見つけてもらいます。ビデオを見せた後,次の事柄を生徒たちと話し合います。

  • ジンクスがモルモン書を読み,祈る動機を与えるために宣教師たちはどんな言動をしたでしょうか。

  • 宣教師の言葉について聖霊が証を述べるようにするために宣教師たちはどんな言動をしたでしょうか。

  • 求道者がモルモン書を読み,それが真実であるかどうかについて祈ることはなぜそれほど大切なのでしょうか。(宣教師が単にモルモン書を配付するだけでは十分ではないということを生徒たちが理解するようにします。宣教師の役目は,求道者が,ジョセフ・スミスが神の預言者であったこととイエス・キリストの福音が回復されたことを自分で見いだすことができるように,モルモン書を読み,それについて祈ることの重要性を感じる助けをすることです。)

人にモルモン書を読むよう勧めるロールプレーを今から行うと生徒たちに伝えます。モルモン書を紹介し,それを読んで,そこに書かれているメッセージが真実であるかどうかを知るために祈るよう勧めることを教師は実演します。その後,生徒たちを二人一組にします。または本手引きの導入の「教えるための活動」の項にある教え方の提案の一つを使うこともできます。

求道者がモルモン書を読み,それが真実かどうかを知るために祈るよう勧めるための準備を生徒たちができるよう十分な時間を与えます。『わたしの福音を宣べ伝えなさい』の39ページ中央下にある「モルモン書を活用して,回復が真実であることを確かなものとする」という表題の欄を生徒たちに読んでもらいます。生徒は,宣教師用小冊子『イエス・キリストの福音の回復』の15-16ページを使うこともできます。生徒たちが練習活動のレッスンを終えるときに,モルモン書の証を述べ,モルモン書を読み,それが真実であるかどうかを祈るよう勧めてもらいます。

生徒全員がモルモン書の証を述べ,それを読んで祈るよう勧める練習を終えてから,この経験で得た洞察をクラス全体に発表してもらいます。

授業を終えるに当たり,伝道に出る前に,モルモン書を読み,個人の証を強めることによる祝福について生徒たちにもう一度考えてもらいます。モルモン書の証を述べたい人がいるかどうか生徒に尋ねます。教師はモルモン書の証を述べて,イエス・キリストについてのこの強力な証を読むことを他の人に勧めるときに,生徒たちが喜びを見いだすであろうことを伝えます。

行動するように勧める

生徒たちにこのレッスンで学んだことを今から1週間応用するように勧めます。次の事柄を実行することを考慮するとよいでしょう。

  • 最初の示現とモルモン書の真実性についてより強固な証が得られるように祈ります。

  • lds.org/topicsの福音のテーマの項にある「最初の示現に関する記録」の記事を読みます。

  • ジョセフ・スミス─歴史1:16-17に書かれている最初の示現の話を暗記します。最初の示現の話を友人や家族に分かち合い,その出来事の重要性についての証を述べます。

  • モルモン書を渡すことができる人を見つけられるように祈ります。霊的な促しを受けたら,それに従って行動します。