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第9課:「子供たちは神から賜わった嗣業(しぎょう)であ」る


第9課

「子供たちは神から賜わった嗣業しぎょうであ」る

目 的

地上の両親が天父の子供たちを自分たちの家庭に迎えるとき,彼らは子供たちを愛し,大切に育て,教え,永遠の命へと導く責任を引き受けていることを参加者に思い起こさせる。

準 備

  1. 教える準備をしながら,「教師としてのあなたの責任」(本書 ixxi)にある原則を実践する方法を探す。

  2. 太字の見出しを読む。これらの見出しには本課の教義と原則が要約されている。準備の一部として,これらの教義と原則を応用できるよう参加者を助ける方法を思い巡らす。参加者の必要に合ったレッスンを行うために何を強調すればよいかを決めるに当たって,御霊みたまの導きを求める。

  3. 事前に,初等協会の子供たち数名にレッスンの始めにクラスに来て「神の子です」(『子供の歌集』2-3;『賛美歌』189番)を歌うように頼んでおく。または参加者とともに歌う準備をしておく。

  4. 事前に,一人または二人の参加者に子供が自分たちの生活にもたらす喜びについて短く話すよう依頼しておく。発表の中で個人的な経験を紹介するよう提案する。だれにこの割り当てを依頼すればよいかを決めるに当たって,御霊みたまの導きを求める。

レッスンの進め方の提案

天父は霊の子供たちを地上の両親に託された

割り当てておいた初等協会の子供たちに「神の子です」を歌ってもらう(「準備」の第3項参照)。歌の後,子供たちに速やかに初等協会のクラスに戻ってもらう。初等協会の子供たちに依頼していない場合は,「神の子です」を参加者とともに歌う。

  • この歌ではどのような真理が教えられているだろうか。

  • この歌から,両親の責任についてどのようなことが学べるだろうか。(以下の歌詞に言及するとよい。「私を助けて導いていつかみもとへ行けるように」)

    第15代大管長ゴードン・B・ヒンクレーはこう勧告している。「この小さな子供たちは神の息子,娘であり,皆さんには彼らを養う責任があること,また,皆さんが親である以前に,神も彼らの親であり,御自身の小さな子供たちに対する権利や関心を保ち続けておられることを,決して忘れないようにしてください。子供たちを愛し,その世話をしてあげてください。父親の皆さんは,今も,そしてこれから先常に,自分の感情を制してください。母親の皆さんも声を荒げることなく,穏やかに話すようにしてください。愛をもって,また主の薫陶と訓戒をもって子供たちを育ててください。小さな子供たちを大切にしてください。家庭の中に温かく受け入れ,心を尽くして彼らを愛し育ててください。」(「生ける預言者の言葉」『聖徒の道』1998年5月号,26)

    十二使徒定員会会員のM・ラッセル・バラード長老はこう教えている。「人は皆,神の霊の子であり,地上に来る前は天父とともに住んでいました。神は霊の子供たちを地上の両親に託されました。両親は肉体の誕生という奇跡を通して,子供たちに肉体を授けました。そして神はその両親に,子供たちを愛し,守り,教えるという神聖な機会と責任を与えられました。そしていつの日かイエス・キリストのあがないと復活を通して御父のみもとへ戻れるよう,光と真理のうちに子供たちを導く責任を与えられたのです。」(「子供を教えなさい」『聖徒の道』1991年7月号,79参照

  • この知識と理解は,両親の子供たちへの接し方にどのような影響を与えるだろうか。

ロバート・D・ヘイルズ長老が管理監督であったときに語った以下の勧告を読む。「子供たちを養育し,愛し,世話をし,教える過程で,地上の両親はいろいろな意味で天父の代わりを務めます。子供たちは知らず知らずのうちに親を見て天父の特質を学んでいきます。地上の両親を愛し,尊敬し,信頼するようになってから,無意識のうちに天父に対しても同じような感情を持つようになることが多いのです。」(「どのように子供の心に残る親か」『聖徒の道』1994年1月号,10

両親の態度や行動が子供たちの天父に対する感情にどのように影響するかを深く考えるよう参加者に勧める。

両親は一人一人の子供の必要を満たす努力をしなければならない

子供にはそれぞれ自分自身の望み,才能,必要があることを説明する。両親は子供たち一人一人の能力や必要としているものを理解しようと努めることが大切である。

多くの子供たちは親とまったく異なっている。気性も異なり,長所や短所も異なる。これらの相違点のために,自分たちが一度も経験したことのない事柄を経験する子供たちを導き助けることの難しさに落胆する両親もいるであろう。しかし両親は,天父がこれら特定の子供たちを自分たちに託されたこと,また天父は両親が子供たち一人一人を神聖な可能性の成就へ向けてどのように導けばよいかを知ることができるよう助けを与えられることを忘れてはならない。以前,中央初等協会会長であったマイカリーン・P・グラスリ姉妹はこう語っている。

わたしたちは子供の本質を見いだす必要があります。何が子供たちの関心を引き,何が彼らの悩みの原因となっているかを理解しなければなりません。また彼らが自分のいちばんの夢を実現させたら,次に何をするかということも理解しておく必要があります。ほとんどの場合,彼らのいちばんの夢はすばらしいものです。子供の主体性を重んじ,親と同じになるよう期待すべきではありません。子供が自分で自分の関心事を見いだせるよう,様々な経験をさせてください。そして彼ら独自の関心事と才能を育てるように励ましてください。たとえそれが親である自分の関心事や才能と異なっていてもです。」(「なんじらの子供たちを見よ」『聖徒の道』1994年10月号,42)

  • 両親が子供たち一人一人の性格や必要を理解することが大切なのはなぜだろうか。

  • 両親が子供たちに,一人一人の才能や関心事と一致しない活動や体験を強要することはどのような害をもたらすだろうか。

  • 子供たち一人一人の才能や能力を伸ばすために両親にはどのようなことができるだろうか。

参加者がこの原則を応用するのを助けるために,同じ家族の子供たちが兄弟同士で,あるいは両親と異なっている点を幾つか挙げてもらう。その際,参加者は親としての経験,あるいは自分自身の両親や兄弟との経験を参考にするとよい。彼らの意見を黒板に書く。その後,挙げられた具体的な才能や性格について話し合う。以下のような質問をして具体的な才能や性格に触れる。

  • 子供にこの才能を伸ばし続けるよう促すために,両親にはどのようなことができるだろうか。

  • 子供がこのような性格であったとしたら,両親はその子供に愛と優しさを教えるためにどのようなことができるだろうか。

  • この才能を持っている子供は,家庭の夕べにどのような貢献ができるだろうか。

それぞれの子供の能力や性格を理解している両親は上手に子供をしつけることができることを指摘する。参加者の一人に,十二使徒定員会会員であった当時にジェームズ・E・ファウスト長老が語った以下の勧告を読んでもらう(『結婚と家族関係参加者用学習ガイド』52)。

「親にとっていちばん難しいチャレンジの一つは,子供たちを正しくしつけることです。子供の育て方は子供の個性によって違ってきます。子供は皆それぞれ異なっており,独特です。一人の子供に合う方法だからといって,ほかの子供にも合うとは限りません。子供をいちばん愛しているその子自身の親以外に,しつけが厳しすぎるとか優しすぎるとか言えるほどの分別のある人はいないのではないでしょうか。親にとってそれは祈りの気持ちで識別すべき事柄です。確かに,最も力があり支えとなる原則は,子供たちのしつけは罰よりも愛によって動機付けられなければならない,ということです。」(「この世での最大のチャレンジ-良い親であること」『聖徒の道』1991年1月号,36)

  • どのような経験から,しつけはそれぞれの子供の必要と状況に応じてなされなければならないことを学んだだろうか。

子供たちは両親から愛される権利を持っている

両親にできる最も大切なことの一つは,家庭に愛と友情と幸福の雰囲気をつくり出すことである。以下の言葉を紹介する。

十二使徒定員会会員であった当時,ゴードン・B・ヒンクレー長老はこう語っている。「親の愛を感じている子供たちは,何と幸福で,祝福されていることだろう。その温かさと愛が,後に甘い実を結ぶのである。」(「なんじらの子供たちを見よ」『聖徒の道』1979年2月号,27)

七十人のマーリン・K・ジェンセン長老はこう語っている。「人生で価値あるほとんどの事柄と同様,友情を必要とする心は家庭内で満たされることがよくあります。家庭内で子供たちが互いに,また親との間に友情を感じていれば,家庭の外に自分を受け入れてもらいたいという強迫観念を持つことはないでしょう。」(「友情-福音の原則」『リアホナ』1999年7月号,74

  • 子供のころ,あなたはどのような経験を通じて自分は愛されていると感じただろうか。そのような愛の気持ちは生涯を通じてあなたにどのような影響を与えてきただろうか。

  • 子供たちが自分は両親から愛されていると感じられるように,両親は家庭においてどのようなことができるだろうか。

両親が子供たちと愛にあふれた関係を持とうと努力する際には,優れたコミュニケーションが不可欠であることを指摘する。M・ラッセル・バラード長老はこう勧告している。「家族内では,開放的で率直なコミュニケーションほど大切なものはありません。それは,子供たちに福音の原則と標準を教えようとしている親にとっては特に大切です。青少年に勧告を与える能力と,恐らくもっと大切なことですが,彼らの関心事にじっくりと耳を傾ける能力は,良い結果をもたらす関係を築く土台です。自分の目に映り,心に感じる事柄は,わたしたちが聞いたり語ったりする事柄をはるかに上回るものを伝えることがよくあります。」(「消せない炎のように」『リアホナ』1999年7月号,104

  • 子供たちと十分なコミュニケーションを持つために,両親にはどのようなことができるだろうか。(以下のような答えが考えられる。)

    1. 根気強い聞き手になる。必要に応じて,子供たちの話から自分が理解したことを繰り返し述べる。これによって自分がほんとうに耳を傾けていることを示すことができ,自分が理解していることを確かめることもできる。

    2. 子供たちがごく小さいときから,話ができるようになる前でさえも,子供と話し合い,彼らの話に耳を傾ける時間を持つ。

    3. 子供の考えに関心を持つ。

    4. 食事の時間に会話をする。

    5. 子供と一対一で話し合う時間を持つ。

    両親は子供たち一人一人と一対一で過ごす時間を持たなければならないことを強調するために,十二使徒定員会会員ロバート・D・ヘイルズ長老の以下の勧告を紹介する。「子供たちと時間を過ごし,活動や話題を子供に選ばせましょう。気を散らすものを排除してください。」(「家族を強めること-わたしたちに託された神聖な義務」『リアホナ』1999年7月号,38

優れたコミュニケーションの原則に関するその他のアイデアについては,第5課の22-24ページを参照する。

子供への虐待は神への冒瀆ぼうとくである

参加者とともにマタイ18:6を読む。両親はいかなる形であっても子供を虐待してはならないことを説明する。

  • 子供への虐待にはどのようなものがあるだろうか。(参加者の答えを黒板に書き出すことも考慮する。以下のような答えが考えられる。)

    1. 激しく怒る

    2. どなる

    3. 脅迫する

    4. 身体的暴行

    5. あらゆる性的接触または不適切な接触

    6. けなす

    7. 愛情を差し控える

    8. 不適切な映画,冗談,言葉遣い,雑誌,またはインターネット上の情報を見せる

    9. 過度に風雨にさらす

    10. 医療を受けさせない,十分な監督やしつけをしないなどの怠慢

  • これらの行為はどのように子供たちに害を与えるだろうか。

この質問について話し合った後,子供のころに虐待を受けた大人は,それがどれほど有害な行為であるかを理解せずに,同じように有害な方法で子供を扱うことがあることを説明する。彼らは自分だけの力ではそのような行為をやめることができないと感じることがある。虐待を行ってきた人々は,謙遜けんそんに主の助けと導きを求めるときにそのような行為をやめることができることを強調する。

虐待的行為を認め,それをやめることに関して助けを望む人は,監督に相談する。監督は彼らに助言を与えることができる。監督は末日聖徒ファミリーサービス事務局のカウンセラーあるいは教会の標準と一致した援助を提供している地域社会の機関を勧めることもできる。

参加者とともに教義と聖約121:41-44を読む。

  • この箇所は両親が子供たちをしつける方法とどのように関係しているだろうか。

    大管長会の第一副管長であった当時,ゴードン・B・ヒンクレー大管長はこう教えている。

    「子供を打つ必要はありません。必要なのは愛と励ましです。恐れではなく尊敬の念をもって見られる父親が必要なのです。何よりも,模範を示す必要があります。……

    わたしの願いは,……子供を救うことです。あまりにも多くの子供たちが苦痛と恐れ,孤独,失意の中を歩んでいます。子供には日の光が必要です。幸福が必要です。愛とはぐくみが必要です。思いやりと励まし,愛情が必要です。家の大小を問わず,すべての家庭が愛という環境を子供に与えることができます。それが救いをもたらすのです。」(「子供たちに救いを」『聖徒の道』1995年1月号,62-63

    第2代大管長ブリガム・ヤングはこう教えている。

    「主への愛とおそれのうちに子供を育てなければなりません。子供たちの気質や気性を理解して,それに応じて対処してください。決して感情に任せて子供をしかるようなことがあってはなりません。子供たちに,あなたを恐れるように教えるのではなく,あなたを愛するように教えてください。」(『歴代大管長の教え-ブリガム・ヤング』190)

子供は両親の生活に大きな喜びをもたらす

両親が自分たちの神聖で厳粛な責任を覚えていることは大切であるが,子供が自分たちの生活にもたらす喜びについてよく考えることも大切であることを指摘する。十二使徒定員会会員であった当時,ジェームズ・E・ファウスト長老はこう述べている。「人が出会うチャレンジで,良い親であること以上に大きなものはほとんどありませんが,またこれほど大きな喜びを与えてくれる機会はほかにありません。」」(「この世での最大のチャレンジ-良い親であること」35。『結婚と家族関係参加者用学習ガイド』51も参照)

割り当てておいた参加者に,子供が自分たちの生活にもたらす喜びについて短く話してもらう(「準備」の第4項参照)。時間があれば,子供たちが自分の生活にもたらしてきた喜びに対する教師自身の気持ちを述べることも考慮する。

結 び

子供たちは天父からの贈り物であることを強調する。詩篇の作者が語っているように,「子供たちは神から賜わった嗣業しぎょう」なのである(詩篇127:3)。地上の両親が天父の子供を自分たちの家庭に迎えるとき,彼らは子供を愛し,大切に育て,教え,永遠の命へと導く責任を引き受けているのである。

『結婚と家族関係参加者用学習ガイド』の37-41ページを見てもらう。レッスンでの教義や原則を復習するため,参加者に以下を行うよう奨励する。(1)「応用のための提案」から少なくとも一つを行う。(2)トーマス・S・モンソン副管長の説教「大切な子供たち──神からの贈り物」を読む。学習ガイドに掲載されている説教を夫婦でともに読んで話し合うことは,既婚者にとって大変有益であることを指摘する。

次回のレッスンに学習ガイドを持参するように参加者に言う。

参考資料

家族に関して様々な状況にある参加者の必要に対処する言葉

家族に関する参加者の様々な状況に対処するために,以下の言葉の一つまたはそれ以上を読む。

十二使徒定員会会員のボイド・K・パッカー長老はこう説明している。「身体的な事情または置かれた境遇のために結婚し子供をもうける祝福を得られない人々,また自分には落ち度がないにもかかわらず独りで子供を育て養わなければならない人々は,戒めを守るかぎり,永遠においていかなる祝福も拒まれることはありません。ロレンゾ・スノー大管長(第5代大管長)は,『それは確かで疑いのないことである』と約束しています。」(「この世から永遠にわたって」『聖徒の道』1994年1月号,27

第11代大管長ハロルド・B・リーはこう語っている。「この世で妻としてのまたは母親としての祝福を受けられなかった(女性)の皆さん,皆さんは心の中で言うでしょう。『もし行うことができたらそうしていたのに』あるいは『もし持っていたら与えていたのに,でも今は持っていないから与えられない』と。主はあたかも皆さんがすでに行ったかのように祝福してくださるでしょう。次の世では,自分自身の過ちでないのに行うことができなかった義にかなった事柄を望んだ人々のために償いがあるのです。」(“Maintain Your Place As a Woman,” Ensign1972年2月号,56)

七十人のジーン・R・クック長老はこう説明している。「時々,死亡または離婚のために片親しかいない家族があります。時々,片親だけが教会員であるという場合があります。また,一人の親がその伴侶はんりょに比べてあまり活発でないこともありますが,どの場合も同様です。霊的に強められた一人の親は,家族を主に近く立派に育て上げることができるのです。わたしがこれまでに知り合った偉大な男女の中には,このような家族で育った人がいます。どうか,これらの善良な母親,父親を主が常に祝福してくださいますように。彼らは自分だけで子育てをしなければならないと感じるかもしれませんが,実際には,主の導きの下で子供たちを育てているのです。」(Raising Up a Family to the Lord〔1993年〕,xv