教義と聖約121：1－10；122章

生徒たちに，友人や愛する人が困難な経験をしていることを想像するように言います。その人があなたに，なぜそのようなつらい経験をしないといけないのか理解できないこと，そして神が自分を見捨てられたように感じることを打ち明けてきました。

• あなたならその友人に何と言うでしょうか。そのようなつらい経験をしているのがあなた自身だとしたら，どうするでしょうか。

ジョセフ・スミスがきわめて困難な経験をしているさなか，主はジョセフに助言と慰めを与えられたことを説明します。教義と聖約121－123章の中にある，主の助言と慰めの言葉が，自分自身の試練のときにどのような助けになるか見つけるように，生徒たちを励まします。

1838年10月31日，教会の会員でミズーリ州軍の指揮官でもあったジョージ・ヒンクルが，ジョセフ・スミスを裏切ったことを説明します。ヒンクルはジョセフ・スミスに，ミズーリ州ファーウェストで聖徒たちを攻撃したミズーリ州軍が，意見の相違を平和裏に解決するために会談する機会を求めていると伝えました。ジョセフとほかの教会指導者たちが会談に訪れたとき，民兵は彼らを戦争の捕虜として強制的に連行しました。翌月まで，ジョセフ・スミスと仲間たちは，敵によってミズーリ州インディペンデンスとミズーリ州リッチモンドに収監され，ひどい虐待と侮辱を受けました。裁判は偽りの告発によるもので，正当な手続きも経ていませんでしたが，ジョセフ・スミスとほかの教会指導者たちは裁判を待つ間，12月1日にミズーリ州リバティーの監獄に移されました。

その後の4か月間，預言者とその兄ハイラム，アレキサンダー・マクレー，ライマン・ワイト，およびケイレブ・ボールドウィンは，冬の厳しい寒さの中，リバティーの監獄の地下牢に閉じ込められていました。シドニー・リグドンも一時的にそこにいましたが，裁判官は1839年1月下旬に彼の釈放を許可しました。しかし敵の脅迫を恐れたリグドン兄弟は，2月上旬まで監獄にとどまっていました。

リバティーの監獄にいる間，預言者とその友が直面していた過酷な状況を生徒たちが体感できるように，テープやその他の手段を用いて，床に14平方フィート（4.3メートル四方）の正方形を作るとよいでしょう。これが監獄の床のおおよその広さであったことを説明してください。また天井の高さは6－6.5フィート（1.8－2メートル）の間でした。

生徒たちに，聖典にあるリバティーの監獄の写真を見るように勧めるとよいでしょう（『教会歴史の写真』写真12「リバティーの監獄」参照）。生徒たちに，そのような狭い場所でほかの4から5人の男性と，冬の4か月間を囚われの状態で過ごすことを想像してもらいます。二つある鉄格子の小さな窓からはわずかな光しか差し込みませんでした。しかもその窓の外からは，人々が囚人をあざけったり侮辱したりしました。囚人たちは床の上に汚いわらを敷いて，そこで寝ました。備え付けの設備も乏しく，排泄物用のバケツが置かれているだけでした。時々ジョセフには，囚人を寒さから守る唯一の物であった毛布さえも与えられないことがありました。食事には時々毒が盛られ，そうでないときでも空腹に耐え切れなくなるまでは食べられないほどひどいものでした。面会を認められるのはまれでしたが，認められたときには冬のさなかにミズーリから追い出された聖徒たちの苦難を聞いて，さらに深く苦しむのでした。

• ジョセフがいた場所にあなたもいたならば，あなたは何を感じ，何を考えていたでしょうか。

教義と聖約121－123章には，リバティーの監獄への投獄生活の最後のころに書かれた，預言者から聖徒たちにあてた手紙の抜粋が含まれていることを説明します。手紙には，主に対するジョセフの嘆願の祈りの幾つかが含まれていました。

数人の生徒に，交代で教義と聖約121：1－6を声に出して読んでもらいます。ほかの生徒には，預言者が主に示した疑問や嘆願を見つけるように言います。（生徒たちが1節と4節の内容を理解できるように，「大幕」とは何かを覆うための建物，もしくは構造であることを説明するとよいでしょう。）

• どんな疑問や嘆願が見つかりましたか。これらの聖句から，ほかにどのような印象を受けましたか。

ジョセフ・スミスの祈りに対する主の答えの幾つかは，教義と聖約121：7－25と122：1－9に見いだせることを説明します。一人の生徒に，教義と聖約121：7－10を声に出して読んでもらいます。ほかの生徒には，聞きながら，リバティーの監獄で過ごした期間にジョセフ・スミスや同僚たちの助けとなったであろう原則を見つけもらいます。生徒たちに，これらの聖句から学べる教義と原則を，クラスノートや聖典学習帳に書いてもらいます。

十分に時間を与えた後で，生徒たちが見つけた教義と原則を発表してもらいます。ホワイトボードに生徒の答えを書きます。次の3つの原則を，生徒たちは見つけるかもしれません。

生徒を二人一組に分け，次の質問について話し合ってもらいます。1度に一つの質問だけをして，話し合う時間を十分取れるようにしてください。

• 試練を耐え忍ぶことと，十分に試練を耐え忍ぶことの違いは何でしょうか。

• 十分に試練を堪え忍んだ人の良い例を知っていますか。

数人の生徒に，パートナーと話し合った内容をクラス全体で発表するように励まします。

• 主は，ジョセフ・スミスの逆境と苦難は「つかの間にすぎない」と語られました（教義と聖約121：7）。これはどういう意味だと思いますか。このような考え方は，わたしたちが十分に試練を堪え忍ぶうえでどのような助けとなるでしょうか。

困難な時期に救い主の平安を得たことがあれば，生徒たちにそのときの経験を話す機会を与えてください。

ホワイトボードに次の質問を書きます。預言者ジョセフ・スミスを通して助言と祝福を求めるのはだれでしょうか。

生徒たちに，教義と聖約122：1－4を黙読して，この質問に対する答えを見つけてもらいます。十分な時間を与えた後に，2－3節の説明が自分たちに当てはまるかどうか，深く考えるように言います。

• わたしたちは，どのようにジョセフ・スミスからの助言を受け続けているでしょうか。またどのように，ジョセフ・スミスのおかげで権能と祝福を受けているでしょうか。

• 主はどのような約束をジョセフ・スミスに与えられたでしょうか。

3人の生徒に，教義と聖約122：5－7を声に出して順番に読んでもらいます。ほかの生徒には，聞きながら，主がジョセフ・スミスとほかの人々が経験している困難について教えられた原則を見つけてもらいます。

• 7節によると，逆境や苦難からもたらされる明確な結果は何でしょうか。（生徒たちが質問に答えた後で，ホワイトボードに次の原則を書きます：苦難はわたしたちに経験を与え，わたしたちの益となる。）

一人の生徒に，十二使徒定員会のジョセフ・B・ワースリン長老の次の言葉を読んでもらいます。ほかの生徒には，苦難がどのようにわたしたちの益となるのか聞くように言います。

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ジョセフ・B・ワースリン長老

「逆境にぶつかると，多くの場合，自分だけが問題を抱えていると感じます。納得ができず『なぜわたしが』と考えます。

しかし悲しみはいずれすべての人にやって来ます。皆いつかは悲しみを経験しなければなりません。免除される人はいないのです。……

落胆，苦悩，悲しみの時期を堪え忍ぶことは，人生で経験する実地訓練の一部です。それらは当座は堪え難いものですが，そのような経験こそ，まさにわたしたちの理解力を広げ，人格を築き，人に対する思いやりを増してくれるのです。」（「どんな出来事も愛しなさい」『リアホナ』2008年11月号，27）

• ワースリン長老は，困難な経験がわたしたちに何をもたらすと語っていますか。

生徒たちに，試練が彼らにどのような経験を与え，彼らのどのような益となったか，クラスノートや聖典学習帳に書いてもらいます。十分な時間を取った後，数人の生徒に書いたことを発表してもらいます。

一人の生徒に，書記としてホワイトボードのところに来てもらいます。その生徒に，ホワイトボードの下から3分の1くらいの位置に横線を長く描いてもらいます。その後生徒たちに，人々が経験する難しい状況を幾つか言ってもらいます。書記に，その答えを線の上に書いてもらいます。

生徒たちがリストを作成する十分な時間を取った後，彼らに，「自分がどれほど苦労をしているかだれも分かりはしない」とだれかが言っているのを聞いたことがあるか尋ねます。生徒たちに，教義と聖約122：8を黙読し，そのような言葉に対する答えとして，主は何と言われるか見つけてもらいます。生徒たちが答えを発表した後，書記にホワイトボードの線の下に，「イエス・キリスト」と書いてもらいます。

• 救い主は「これらすべての下に身を落とした」とは，どのような意味だと思いますか。（生徒たちが答える前に，生徒たちに2ニーファイ9：20－21，アルマ7：11，教義と聖約88：5－6を読むように勧めるとよいでしょう。生徒は様々な言葉で表現するかもしれませんが，恐らく次の教義を見いだすでしょう：救い主はすべての人の痛みと苦難を身に受けられた。）

• リバティーの監獄におけるジョセフ・スミスと同僚たちにとって，この真理がどのような助けになったと思いますか。

生徒たちがこの教義を理解できるようにするために，一人の生徒に，ワースリン長老の次の言葉を声に出して読んでもらいます。

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ジョセフ・B・ワースリン長老

「イエス・キリストは大いに苦しまれたので，人の苦痛と悲しみを理解しておられます。わたしたちも試練を受けることによって，さらに人を思いやり，理解できるようになります。

暗く，息が詰まるようなリバティーの監獄で，預言者ジョセフ・スミスが同僚たちと苦しんだときに救い主が語られた崇高な言葉を思い出してください。

その言葉によって，ジョセフは慰められました。わたしたちも同じです。」（「どんな出来事も愛しなさい」27）

• どのような意味において，あなたが経験した「試練」は，さらに人を思いやり，理解できる助けとなりましたか。

生徒たちに，教義と聖約122：9を黙読し，この聖句がどのように預言者ジョセフ・スミスの人生と教え導く業に関連しているか，深く考えてもらいます。

• また，教義と聖約122：9がどのようにあなた自身に関連していると感じますか。この聖句は，困難な経験のさなかにあるときに，どのようにあなたを強めてくれると思いますか。

この手紙が書かれた直後に，主はジョセフと同僚たちがイリノイ州の聖徒たちと再会する道を開かれたことを説明します。生涯を通して，神はその僕であるジョセフ・スミスとともにおられたことを証します。わたしたちが試練のときにも忠実であり続けるならば，神はわたしたちとともにおられることを，生徒たちが理解できるようにする。ジョセフ・スミスがその生涯の最後のころに述べた以下の証を紹介して終わります。「全能の神が盾となってくださいます。もし神がわたしの友であられるなら，人に何ができるでしょうか。」（History of the Church, 5:259で引用）。